以前は芸人やタレントが個人で営業するような闇営業ではなく、これも事務所やプロダクションの営業による仕事だったのだ。
「スポーツ界も芸能界と同じで、興行があれば当然、ヤクザとはつながっていたわけで。以前は興行自体が、その地域の各組織の利権でしたから。相撲のタニマチなんかにも暴力団の組長がけっこういましたよ。巡業の時は、部屋を提供したりしてね。昔はお茶屋の利権まで売り買いしていましたから。今は相撲部屋に迷惑をかけるといけないから、そういう人ほど表には出てきませんがね」
相撲部屋も暴力団も、親方や組長が代替わりすれば、おのずと関係が変わっていくとは思うが、話を聞いている限り、関係が完全に断ち切れているという印象は薄い。
「ボクシングジムの経営にヤクザが関わっていたところもある。それにボクシングは興行があるからね。あれこれ仕切らないといけないし、チケットも売らないといけない。海外からアーティストを呼んでくる時だって、昔はネット販売なんてないですからね。会場の外にいるダフ屋もそうですが、チケットを売るためにヤクザが必要だったんです。野球は野球賭博があったしね。そこでつながる野球選手や相撲取りもいましたよ」
世間的にいえば、ヤクザの方から芸能人やスポーツ選手に近づいていくというイメージしかないが、実際は俳優やタレントからヤクザに近づくというパターンも存在するという。
「ヤクザ映画の俳優なんかは、実話が映画化されるとなれば、その近親者や関係者に取材することもあるわけですから、知り合いになるわけですよ。格闘家なんかが引退すると、俳優として映画に出演したりすることもありますしね。何度かチケット買わされましたよ」
その後の付き合い方は、おのおのだという。
では半グレはどうなのか? 半グレ集団と何度か対立したことのある若手実業家はこう話す。
「半グレとヤクザでは話が違いますよ。やつらは芸人やタレント、モデルを自分の見栄やステータスとして呼びたいんでね。ヤクザのように面倒をみていたとか、仕事でつながりがあったとかではない。人を集めるため、金を集めるため、見栄のためにやっている」
「半グレは名前のない芸人には用はないんです。そんなもん呼んだところで、ステータスになんてなりません。かわいいタレントやきれいなモデルなら話は別ですが」
「投資会社のパーティだとか、IT企業の忘年会とか言われて仕事を受けるヤツもいるんでしょうが、行って、自分の目でそいつらを見たら絶対、怪しいってわかりますって」
暴力団幹部も若手実業家も、最後に同じことを言った。
「今の時代、そんな所に呼ばれて行くヤツがバカなんです」