そして、先週飛び込んできたニュースに驚く。なんと7月4日、11日にEテレ『バリバラ~障害者情報バラエティー~』に田代が出演。タイトルは「教えてマーシー」、ここからもわかるように“覚せい剤と笑い”を混ぜた講義を披露。放送前にはYouTubeでダイジェスト版も配信された(どんだけマーシーに力を入れるんだNHK……)。
そのサムネイルも攻めている。満面の笑みで親指を立てる田代と紫色に輝く「クスリの魔力」の文字。NHK、完璧どっかおかしくなってる(褒め言葉)。
田代曰く「(刑務所は)売人の知り合いができたりと、悪のコネクションを広げる場所」。覚せい剤の根本治療にならない。条件的にやれないだけで、本音はやりたくて仕方なかったという。『やらかし先生』から一歩踏み込んだ授業をしていた。
2度の懲役を経て出所した田代にとって、ネット番組は重要である。不謹慎なお笑いを拒む傾向が強まるテレビ番組に、彼の新しい芸がすぐ受け入れられる可能性は低い。PV、AbemaTV、YouTuberで慣らし運転。“覚せい剤と笑い”がネット視聴者に受け入れられた先にEテレでの授業がある。ネット番組が存在していなければ、田代はお茶の間へ再び登場できなかった。
田代を追いかければ、覚せい剤の本質が理解できる。治療で処方される薬は病を治すためのものだが、覚せい剤は中毒を発病させる。
過去、公の場で覚せい剤の体験談を明るく語る人はいなかった。ゆえに田代は新しい、そこに嫌悪感を抱く人がいることは理解できる。ただ、悪事に手を染めてはいけないことを喚起するトークがつまらない必要はない。ユニークな語り口の方が沁みる場合もある。なんの因果か、アンチ覚せい剤の教科書になる人物は今のところ田代以外いない。
●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週一回開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)