それにしても、「新しい地図」をスタートしてからの稲垣は、草彅剛、香取慎吾と共に、すこぶる順調といっていいだろう。
市井の人を演じた主演映画『半世界』は、「第31回東京国際映画祭」で「観客賞」を受賞。海外のマスコミからも高い評価を得た。
また、ベートーヴェンが稲垣に乗り移った舞台『No.9~不滅の旋律~』の再演や、2006年、大竹しのぶ、段田安則、ともさかりえと演じた4人芝居『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?』と同じキャストの『LIFE LIFE LIFE~人生の3つのヴァージョン』も大好評だった。
俳優・稲垣吾郎が世間に広く認められるようになったのは、映画『十三人の刺客』や、ドラマ『流れ星』(フジテレビ系)で、救いようのない悪役やダメ男を演じてからだろう。どちらも2010年のことだ。
役柄だけではない。どちらも稲垣の主演作ではなかったことにも世間がザワついた。「主役でなければならない」人たちが集まった唯一無二のグループに居ながら脇役で新たな一面を見せたことと、その演技力に高い評価が集まったのである。
◇稲垣の魅力が凝縮された舞台はキュンキュン確実
SMAP時代は、年齢から「中間管理職」を自称していた稲垣だが、「新しい地図」では長兄的存在。世間で広く知られているように、香取と草彅は「しんつよ」とペアで呼ばれる機会が多く、公私にわたって仲良しという印象が強い。「新しい地図」の3人はグループではないものの、その2人に稲垣が加わったことで、いい意味での刺激が与えられたり、広がりが出たことは、草彅や香取のファンも認めるところだと思う。
プライベートでは、ワイン好きであることが有名だが、女性誌で映画評論の連載をもっていたり、番組終了時、多くの小説家が心から嘆いた『ゴロウ・デラックス』(TBS系)では読書家の一面が披露された。小説家との対談の仕事も増えているが、作家を心地よくさせるだけでなく、刺激を与えて帰す立派な書評家でもあるのだ。