私がマネージャーとして働いていた時代、実際に感じたことは、一部のマネージャーと若手芸人の間に“距離”があるということだった。

 マネージャーとして働くことを決めた際には、「誰が売れるかわからない。上下をつけず、みんなと仲良くしよう」と決め、若手芸人と接することを心がけた。若手芸人とコミュニケーションをとることで、どんな仕事ができるのかを聞き出し、クライアントへのプレゼンに役立てられるかもしれないと考えたからだ。

 しかし、実際に若手芸人たちに初めて会った際、気さくに話しかけてきたのは、わずかひとりだけだった。その後、自分から芸人に声をかけても「アンタ、誰だ?」というリアクションをされることもあった。

 新人の私に声をかけてくれた一人の若手芸人から、他の芸人を紹介してもらい、徐々に芸人サイドと仲良くなっていった。そして入社から数ヶ月後、それまで話したことがない芸人と食事をする機会があったので、「なんで今まで、声かけてくれなかったの?」と聞いてみた。すると「いや、怖いですよ。声はかけにくいです」と言われた。「えっ、こんなにフレンドリーなのに?」と驚いたのは、今でも覚えている。

 貫禄があって、白髪が生えたスーツを着た大人が相手ならば、20代の芸人が声をかけられないのはわかるが、当時の私はギャル系の服を着た24歳で、会社でキャッキャと騒いでいた女性マネージャーだ。しかし、彼の意見を聞くと、私は事務所に雇われた会社員であり、“目上の存在”なので、声はかけづらいとのことだった。

 私が、「芸人と仲良くしたい! 売れてほしい!」と思っていても、大半の芸人はたとえ若手マネージャーでも、話しかけることに遠慮をしてしまうようだった。この時、私は自分が “会社側”の人間であり、テレビ出演がほぼ無い芸人との間には、見えない壁があるのかもしれないと悟った。

◆「ファミリー」という言葉はしっくりこない

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