天野が芸能界との付き合いを断ったのは2011年、島田紳助が山口組幹部との交際を理由に芸能界引退したときである。
「ああ、これはまずいなと思って、付き合っていた方々に『今までお世話になりました』と手紙を出して、お付き合いをお断わりしたんや。『本当にありがとうございました』と連絡してくれる人もおった」
それからは盆暮れの挨拶も日常の連絡もしていないという。
カネ絡みで芸能人を呼び、その関係をひけらかす半グレに、そこからカネをもらって喜ぶ芸能人──。
人としての「生き方の違い」だが、そこには天野が常に気にした「所作」の美学は微塵もない。その行き着く先が、吉本興業と所属芸人との索漠たる人間関係ではないだろうか。
●いとう・ひろとし/1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業、編集プロダクションを経て、ジャーナリストに。経済事件、暴力団事件などの取材に定評がある。主な著書に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』など。
※週刊ポスト2019年8月9日号