芸能

小籔千豊の前で話すNSC若手芸人に芸の世界の残酷さを見た

NSC卒業でも面白いとは限らない(イラスト/ヨシムラヒロム)

NSC卒業でも面白いとは限らない(イラスト/ヨシムラヒロム)

 吉本総合芸術学院、略称のNSCで呼ばれることが多い吉本興業が創立した新人タレント養成所は、第1期生のダウンタウンをはじめとして多くの有名お笑い芸人やタレントが輩出されている。大阪だけでなく東京や他地方にも設置され、NSC卒業生は増えるばかりだ。NSC出身でプロの芸人となったがまだ芽が出ない若手を対象に、小籔千豊が笑いを取れるよう短期集中トレーニングを施す番組『笑イザップ』(大阪チャンネル)があるが、なかなか彼らは面白くならない。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、美大生時代の自分とNSC出身芸人との共通点に気づき、考えた。

 * * *
 関西で人気のテレビ番組が月額480円で見放題のアプリ「大阪チャンネル」。主に提供される番組は在阪民放局のバラエティ番組だが、アプリでしか見られないコンテンツも用意されている。その1つが『笑イザップ』だ。

 若手芸人を独自の短期集中プログラムで1ヶ月間トレーニング。面白い芸人になれるかを検証していく。トレーナー役は『人志松本のすべらない話』でMVS(Most Valuable すべらない話)を2度獲得した小籔千豊。芸人にとっての基礎となる「エピソードトーク術」を若手芸人に叩き込む。

 第1話で小籔はトレーニングの被験者を選ぶためオーディションを開く。集まった吉本クリエティブエージェンシー所属の若手芸人が順々にエピソードトークを披露していく。

 その様子を観れば誰しも気づくだろう。オーディション参加者の多くが「人を笑わせる」段階まで至っていないことに……。話が右往左往する人、聞き取れないほど早口な人もいる。総じて悪い方にクセが強い。そして、皆総じて語気は強い。

『笑イザップ』とは「エピソードトーク術」を向上させる番組。ある程度話せる若手芸人が被験者となっても効果が薄いことは理解している。それにしても、話ベタな若手芸人が多すぎやしないか。芸歴は短いとはいえプロの芸人、一般人より上回る面白さは持っていて欲しい。

 エピソードトークで人を笑わせることは、コミュニケーション能力の賜物だと思う。話を披露する以前に、話を聞いてもらう状況を作り出さなくてはならない。「コイツの話は面白い」といった信頼関係を築くことが必須である。しかし、若手芸人の多くは信用を勝ち取った経験がないのだろう。小籔の顔色を気にすることなく、力強く話し続ける。学生時代はきっと冴えなかったメンツ。学生時代、クラスで笑いをとっていた人気者は参加者にはいない。

「根暗のヤツの方が実は面白い」、かつて松本人志が打ち出したテーゼの一つである。『アメトーーク!』でも「中学時代イケてなかった芸人」といった企画が人気を集めた。僕自身、イケてなかった側である。松本のテーゼを信じていた、いや信じたい。しかし、『笑イザップ』を観ていれば疑念も湧いてくる。テーゼ間違ってるんじゃね……、と。

 落ち着いて考えればわかる。クラスの端にいる「本当は自分が面白い」といった自意識を持つ人が面白いはずがない。教室の中央で騒ぐ、イケている人気者の方が面白いに決まっている。

 とはいえ年間1000人が入学するNSC、なかにはイケてない青春を送ったのにも関わらず、売れる芸人もいる。陰惨な学生時代を持ちネタとして披露し、笑いをかっさらう。その姿がメディアに取り上げられるから勘違いが起こる。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト