国内

京アニ事件から考察、心神喪失者への「人間観」のあり方

放火された京都アニメーション第一スタジオ(時事通信フォト)

放火された京都アニメーション第一スタジオ(写真/時事通信フォト)

 凶悪な事件の容疑者に「精神科への通院歴あり」と報じられると、果たしてこの人物に罪が問えるのかという問題が浮上する。刑法では心神喪失者について39条に規定があるが、いったいどんな人間だと考えればよいのか。京都アニメーション放火事件から、評論家の呉智英氏が心神喪失と法律が定める人間について考えた。

 * * *
 京都アニメーションの大惨事に、日本中から強い関心と怒りの声が挙がっている。そのうちの一つが、現時点で死者三十五人、負傷者三十三人もの被害者を出しながら、容疑者の青葉真司はなぜ手厚い治療を受けているのか、という批判だ。しかし、これは間違っている。青葉への治療は、事件の全容解明のために必要であり、彼に賛同し支援しているわけではない。

 とはいえ、そういった怒りの声が出るのは、今後の捜査、起訴、判決への懸念が、誰の脳裏にも浮かぶからだ。心神喪失により無罪となる可能性がありうるのだ。

 この問題は、類似の事件が起きるたびに浮上してくるのだが、本質的な議論に進まないまま、うやむやになってしまう。

 心神喪失とは、精神障害によって善悪の判断や意志能力を欠くことだ。心神喪失者は、社会的・法律的行動を取ることのできる一般人の枠を外れた「埒外の人」である。これを法律は罰しえない。

 法律は、法を犯した人を罰する。人を殺せば殺人罪に問われる。しかし、海で泳いでいた人が溺れて死んだ場合、海を刑務所にぶち込んだり死刑にすることはできない。海は「人」ではなく「物」だからである。山から岩が落ちてきて人が圧死した場合も同じ。行政当局の管理責任を問うことはありうるが、海や岩には何の責任もない。海や岩に善悪の判断能力や意志能力はないからだ。

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン