前田氏は「ただし」と話を続ける。
「経理部員にも2種類いて、ノルマもなく自分のペースで仕事ができ、定時で帰ってプライベートを充実させたい、それができるから経理を選んだという『割り切り型』の人と、お金の扱い方が会社の大事な要素だとわかって、不備や不正がないことを目指し、それをもって会社に貢献しようとする『道徳型』の人がいます。『道徳型』の人は、『これはダメなんじゃないか』とか『これは改善したほうがいい』などと提案できる。そういう人がいる会社は、昨今大企業でも出てくる粉飾決算が起こらない会社といえるでしょう」
ドラマの森若は「道徳型」の範疇に入るだろう。第1話では、営業部の若手エース社員・山田太陽(重岡大毅)が提出した領収書が私用のものだったかどうかを調べるために、出張先のレジャーランドで“張り込み”までしていた。
そうかと思えば、「これは『リサーチ費』では経費で落ちません。でも、『接待交際費』なら経費で落ちます」と柔軟な思考も見せる。「期日管理に厳しいだけだったり、単に数字のことしか言わないから疎まれる」(前田氏)のであって、領収書の費目の意味することや費用の使い方をきちんと説明すれば、それはその人の本来業務にも好影響をもたらす。
なぜなら、どんな部署にいようとも、コストや売上、利益の数字はついて回るものだからだ。会社にまつわるお金について社員にアドバイスができるようになれば、他部署から頼りにされる存在になれるというわけだ。
経理という一見地味な部署の中に会社の根幹に関わる大事な要素が詰まっていることを、このドラマは教えてくれる。
●取材・文/岸川貴文(フリーライター)