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2019.09.03 11:00  週刊ポスト

職人的役者・柄本明 「自分の姿を見るというのは恥ずかしい」

(C)2019「ある船頭の話」製作委員会

「ある船頭の話」はオダギリジョーの長編初監督作品(C)2019「ある船頭の話」製作委員会

「そりゃ、意に沿わない仕事だってあるでしょ。これは70%オッケーだな、とか。誰でもあるでしょ、生きている人間にはみんな。すべて素晴らしい素晴らしいで来たら最高だけど、そんなわけなくてね。まあ、生きているということはそういうことだものね。それと、僕の場合、劇団をやってますから。こっちは何も“おあし”がないですけどね。僕は劇団から始め、そこが自分の場所ではありますし。劇団員70人もいるんですよ。そういうのが嫌いじゃないんでしょうね」

 柄本の仕事は、いまやどちらかというとシリアスな印象のものが多いが、一方で、笑いやコメディに対しても情熱を注いできた。

「基本は、何をするにしても、喜劇じゃないですかね。いま、軽演劇のいわゆる“アチャラカ”がなくなっちゃったのが残念ですよ。伊東四朗さんや小松政夫さんあたりを最後に。三木のり平先生とか渥美清さんのような喜劇ができればいいんですけどね」

 自身も笑いへの挑戦は続けている。バラエティ番組『志村けんのだいじょうぶだぁ』では、志村けんと名作コントも残してきた。

「志村さんとお仕事させていただくときは、ほんと緊張します。いまも怖いですね。志村さんの掌で転がされている、そんな感じです。同じことをやり続けていることがすごい。同じだけど、常にそれが新しい。ずっと笑いを考え、戦っているんだと思います」

 古希を迎えた職人的役者は、これからもひたすら作品を重ね、演技にさらに深みを帯びさせていくのだろう。が、柄本自身は、そんな気負いを一切見せない。終始シニカルなままだ。

「あぁ、この仕事って、くだらねぇなあ、と思えたらいいです。くだらないってことが僕なんかの中では最高なんですけどね。自分の仕事を素晴らしいとかっていうのは、どうも思わないなあ。縁遠いなあ。こういう映画を見てね、素晴らしいって言えりゃいいんだけど、自分の姿を見てね、舟漕いでいるのを見てね、やっぱりそうは言えないよね(笑い)」

新作では船頭を演じる

●えもと・あきら/1948年生まれ、東京都出身。1976年劇団「東京乾電池」をベンガル、綾田俊樹とともに結成、座長を務める。1998年『カンゾー先生』にて第22回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。舞台、映画、テレビドラマに多数出演し、2011年には紫綬褒章を受章。

◆撮影/江森康之、取材・文/一志治夫

※週刊ポスト2019年9月13日号

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