アマゾンの正社員として首都圏の物流センターで2013年から2016年まで働いた山本英樹(仮名)は、その遅延の理由をこう説明する。
「アマゾン社内では、物流センターでアルバイトの方が倒れたときの連絡系統というのが厳格に決まっているんです。発見者からリーダー、次にはスーパーバイザー、その次は“アマゾニアン(アマゾン社員を指す)”に連絡を上げていかなければなりません。そのうえで、センターのトップであるサイトリーダーなどに報告して、はじめて救急車を呼ぶことができるんです。アルバイトであるリーダーやスーパーバイザーが、アマゾニアンの頭を飛び越して救急車を呼べば必ず叱責の対象となります。アマゾンの承諾なしに救急車を呼べば、派遣会社の責任も問われます」
◆香典3万円だけ
私が小田原市内にある公団の4階のドアの呼び鈴を押したのは、2017年11月の小春日和の日だった。80代の内田の母親が出てきた。居間にある内田の仏壇に焼香してから、亡くなった当日の朝の様子を聞いた。
「いつも通りで、全然変わったところはありませんでした。残業があるならやってくるから、と言って家を出ていきました。体調を崩していたか? それはなかったですね。いたって健康な子で、アマゾンで働いて4年ぐらいになるんですが、病気で休んだこともありませんでした」
内田のアマゾンからの収入は月14万~15万円で、それに母親の年金の約10万円を合わせて暮らしていた。内田が所属したのはワールドインテックの下請けの《日本郵政スタッフ》という派遣会社で、内田は、週に5、6日、働いていた。
内田が亡くなった当日、どのような連絡を受けたのだろう。