芸能

ジャニーさん、ショービジネスの神髄を学んだその過程

ジャニー喜多川氏の「お別れの会」には多くのファンが訪れた(写真:時事通信フォト)

 ジャニー喜多川さん(享年87)の「お別れの会」が9月4日、東京ドームで行われた。独特の審美眼で、日本のエンターテインメントの歴史を塗り替えた「日本一有名な芸能事務所の社長」の人生を振り返る。

 ジャニーさんは1931年、米ロサンゼルスで日系2世として生まれた。真言宗の僧侶だった父親は、日本人街リトルトーキョーにある高野山米国別院で主務を務めていた。

 生まれて2年後の1933年には一家で日本に移住。少年時代のジャニーさんに強烈な記憶を植え付けたのは戦争体験だった。

 1945年7月、疎開先の和歌山で突然空襲警報が鳴り響き、アメリカの爆撃機が和歌山を総攻撃したのだ。『蜷川幸雄のクロスオーバートーク』(NHKラジオ第1、2015年1月1日放送)で、ジャニーさんは当時の心境を語っている。

「無数の死体を跳び越えながら、焼夷弾が降る中、ひとり必死で逃げまどいました。紀の川に飛び込んで、奇跡的に助かりました。和歌山の空襲はあの1回きり。アメリカにいるはずのぼくが、何で一生のうちに一度しかない空襲に遭うんだろうと思います。そういう運命になっているんですよ、ぼくの人生」

 太平洋戦争後、ロスに戻ったジャニーさんだったが、再び日本に帰国すると、1950年に始まった朝鮮戦争で、今度は米軍の一員として再び戦地に立った。ラジオでのことばだ。

「みじめでしたよ。戦争で親を失った大勢の戦災孤児がいました」

 ジャニーさんは、米軍キャンプに群がる飢えた孤児たちが残飯を奪い合う光景に、心を痛めたという。

「うれしかったのは、山中を歩く姉弟を車に乗せた時、朝鮮民謡の『アリラン』を歌ってくれたこと。歌の力や平和の尊さを実感しました」

 映画演劇評論家の萩尾瞳さんが話す。

「2つの祖国の間で、アイデンティティーが引き裂かれるつらさを味わわれたのではないでしょうか。戦争体験が、ジャニーさんのひとつの原風景となっていることは間違いないでしょう」

◆日本の芸能界はアメリカより30年遅れている

 太平洋戦争後、ジャニーさんはロスで、人生を大きく左右する出来事に出合う。

 当時、まだ幼かった美空ひばりや田中絹代ら往年のスターらのロス公演の会場が父親の勤務先だったことで、ジャニーさんは通訳やステージ管理などのサポートを行った。その経験が、後に日本で芸能事務所を設立する大きなきっかけになる。先の蜷川幸雄氏との対談ではこう語った。

「会場で、スターの写真を1枚50セントで売ると飛ぶように売れました。売上金を本人に渡したら、『受け取れない』と皆さんおっしゃる。でも、これはスターのかたがたの肖像権で得たお金。大変な価値があるから、ぼくがもらうわけにいかない。すべて持って帰ってもらいました」

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