溝口:しかしながら、実際に抗争するのは難しいのではないか。10月には天皇陛下の即位の礼があります。天皇を重んじるヤクザがその間に抗争することはあり得ないため、やるなら9月中ということになる。しかし今、弘道会がやり返せば、飛んで火に入る夏の虫とばかりに警察から「組織的犯行」とみなされ幹部まで逮捕される可能性が高い。そこまでのリスクを負えるでしょうか。
鈴木:一方で、同じく10月には山口組分裂の最大のキーマンと言うべき六代目山口組・高山清司若頭が出所してきます。高山若頭の出身母体である弘道会のトラブルを出所する前に解決しておかないと、高山若頭が出てきたときに今まで何もしなかったのかって処分されるんじゃないかと親・弘道会の直参組織はみなビビっている。それほど高山若頭は恐れられていますから。
溝口:そもそも高山の恐怖支配こそが、神戸山口組が出て行った最大の理由ですからね。そして神戸の幹部にしても、「高山が収監されたから反旗を翻したのか」と聞くと、「その通りだ」とはっきり言っていた。鬼のいぬ間に出て行ったということです。
鈴木:六代目山口組は司忍組長と高山清司若頭がともに弘道会出身ですが、これは異例中の異例でした。これまでは山口組組長とナンバー2の若頭の出身母体は別の組織から出すのが慣例だったので、これが火種になったんですよね。
溝口:執行部に入るのは1つの組から1人と決まっていましたからね。
鈴木:他の組が怒るのは当然で、要するに、若頭というのは次期組長と目されるわけですから、「弘道会が続けて2回もやるんじゃねえよ」ってことです。