溝口:六代目山口組は弘道会が名古屋だから、いくら本部が神戸にあっても「名古屋」と呼ばれる。
鈴木:神戸市民の中には山口組の抗争を間近で見てきたという変な自負がある人も多いですしね。
溝口:六代目山口組には、神戸の本部を清算して名古屋に移すのではないかという話が、依然としてある。
鈴木:あそこはもともと田岡一雄・三代目組長の邸宅ですから、もし本当にそうなったら、ますます「名古屋vs神戸」という図式になりますね。
溝口:しかし地域に根ざすにせよ、警察に捕まるから何もしない、抗争もしないとなれば、いずれ暴力団は存在意義を失ってしまう。シノギができなくなって、消えゆくのみになる。
鈴木:昔は抗争になったらみんなメディアに向かって「来たらやる。来るなら来い」と息巻いていたのに、最近は逆にちらほら恫喝が飛んでくるようになったんですよ。「ヤクザをしたこともないくせに、好き勝手なことを書き散らし、抗争を煽りやがって」って。
溝口:そのくせ、相変わらず、いいモン食って、いい女抱いて、いい車乗ってということを価値としている。その時代遅れの感覚を捨てられないから、ヤクザの新しい姿が見えてこない。
鈴木:このままだと令和の時代に、ヤクザは絶滅するかもしれません。
●みぞぐち・あつし/1942年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業。ノンフィクション作家。『食肉の帝王』で2004年に講談社ノンフィクション賞を受賞。主な著書に『暴力団』『山口組三国志 織田絆誠という男』『さらば! サラリーマン』など。
●すずき・ともひこ/1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『潜入ルポ ヤクザの修羅場』『ヤクザと原発』『サカナとヤクザ』など。
※週刊ポスト2019年9月20・27日号