次々と他業態とタッグを組む幸楽苑HD社長の新井田昇氏(時事通信フォト)

次々と他業態とタッグを組む幸楽苑HD社長の新井田昇氏(時事通信フォト)

 昇氏は三菱商事を経て幸楽苑(現幸楽苑ホールディングス)に入社。その後、楽天に出向するなど社内外で経験を積み、早くから後継候補と目されていた人物だ。

 昇氏は新規顧客の開拓を担当。テレビCMやSNSを利用して集客を進め、コンビニとの提携商品などでも新機軸を打ち出してきた。ローソンで「冷やし味噌野菜たんめん」を売り出し、さっぱり&コクの味噌スープで定着を図ったのも昇氏だ。

 2018年12月31日の全国紙の朝刊にデカデカと「2億円事件」と銘打った全面広告を打ったのも、昇氏の発案だという。

〈31日15時から1月1日(元旦)いっぱい、フードコートの一部を除く「全店」を休業する〉という内容だ。〈1月1日の売り上げは「およそ2億円」だが、「働き方改革を、お正月にも」との思いから、創業64年で初めて休業を決めた〉。「2億円」の売り上げをパーにしても、従業員を休ませることにしたというわけだ。年中無休のラーメンチェーン店が大きく変わります、というイメージ広告にもなっている。

 ネット上では「元旦に休業するだけで大騒ぎ、恥ずかしくないの?」といったネガティブな反応もあったが、幸楽苑は公式サイトに「今夜はおそば屋さん(日本そば店)で年越しソバを食べて下さい」とする広告を載せるなど、気配りをみせた。

 その昇氏はいま、猛烈な勢いで他業態とタッグを組んでいる。まず、2018年12月、「焼肉ライク」を展開するダイニングイノベーションと提携。郊外店10店舗を焼肉ライクに転換した。

 焼肉ライクは「牛角」を創業した西山知義氏が同年8月に始めた焼肉チェーン店で、ひとりでも気軽に食べられるスタイルが人気だ。一人焼肉は現在ブームで“焼肉女子”のご用達の店はどこも盛況である。幸楽苑もその波に乗るつもりなのだろう。

 また、2019年1月、楽天と共通ポイント「楽天ポイント」の利用で提携した。全国にある幸楽苑の店舗で楽天ポイントを貯めたり使ったりすることができる。両社はAI(人工知能)を使った新たなサービスを店舗に導入する考えだ。これで人手不足を乗り切れるような店が誕生すればビッグヒットとなろう。

 8月には、ユーグレナと共同で藻の一種「ミドリムシ」を練り込んだ緑色のつけ麺「ユーグレナつけめん」の販売を開始した。共同プロジェクトの第1弾である。「ユーグレナつけめん」はテレビで話題になるなど、健康志向のトレンドをつかまえつつある。

 ラーメン大好き人間にとって、「健康より豚コツラーメンを、まず一杯」という人も多いが、ユーグレナはミドリムシを活用した機能性食品や化粧品を販売。バイオジェット燃料の商業化に挑む“好感度企業”である。

 さらに9月に入って、とんかつ店「かつや」など揚げ物料理店を手掛けるアークランドサービスホールディングスと業務提携。アークランドの唐揚げ店「からやま」のFC契約を結んだ。FC 1号店は愛知県岡崎市の「からやま岡崎伊賀店」で、9月3日に新規開店した。同店の周辺には幸楽苑のラーメン店が複数あり、競合を解消するのが狙いである。

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