青瓦台周辺でのチョ氏を擁護する動きは行き過ぎの感が否めない。その裏には、どうやらチョ氏自身の“日本への強硬姿勢”を文政権が買っている、という事情があるようだ。
チョ氏は今年7月まで、青瓦台で法律関連の補佐をする民情首席秘書官を務めていたが、そのような公職にありながら、韓国を席巻する「NO JAPAN運動」について「怖気づかずにしっかりやっていこう」などとSNSで発信した。それ以外にも、日本を引き合いに出しつつ韓国の民族感情を刺激するような発言を何度もしている。
その言葉は、文大統領をはじめとする青瓦台関係者にとって心強いものだ。そもそも文大統領自身が、2000年に三菱重工業を相手取って起こされた徴用工訴訟で原告側弁護団の一角を担っていた。そのため文政権では、徴用工問題は、日本に一歩も譲ることができない最重要事項となっている。ちなみにチョ氏は前述の聴聞会でも、日本企業による徴用工への賠償を命じた韓国大法院(最高裁)の判決について、「必ず尊重されねばならない」と断言した。
しかしそれは、1965年の日韓請求権協定で定められた戦後の枠組みを葬り去ることを表明していることと同義だ。その先に、文大統領は自分の理念に沿った日韓関係を再構築しようというのか。その理念とは、去る8月15日の光復節の演説で言及した「韓半島の平和」、すなわち南北統一であるのだが、日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄に見られるように、北朝鮮との宥和のためなら日韓関係はもちろん、米国との同盟関係すら、文大統領は重視していないように映る。
文大統領は、自分の理念を世界に浸透させるという青写真を思い描いているのだろう。慰安婦問題や日本産食材も含めた日本へのネガティブキャンペーンは、今後さらにボルテージが高まるような気がしてならない。