国際情報

「21世紀で最も残酷な監視社会」ウイグルで今起きていること

習近平・中国国家主席が進める「ウイグル版文化大革命」とは(AFP=時事)

 混乱が続く香港。9月4日には香港政府がデモの引き金となった「逃亡犯条例」改正案を撤廃したものの、市民による大規模な抗議活動は終息の兆しが見えない。大陸の動向が読めない状況で多くの市民が怖れるのは、「中国政府による香港のウイグル化」という悪夢の到来である。

 中国の最西端に位置する新疆ウイグル自治区はかつて中央アジアを横断するシルクロードとして繁栄し、1955年に中国の自治区となって以降はイスラム教徒であるウイグル人を中心に様々な民族が共生してきた。近年は中国政府によるウイグル人弾圧が国際社会で繰り返し批判されている。この地域で、いったい何が起きているのだろうか。

「20年ぶりに訪れたカシュガルは完全に中国の街で、いたるところに設置された監視カメラがウイグル人市民の動向を常時チェックしていました。建物に入るには厳格な安全検査が求められ、交番近くのスピーカーからは、『社会秩序を乱す悪を徹底排除しよう!』との大音量の警句が中国語とウイグル語で交互に流れていました」

 こう振り返るのは、『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在』(PHP新書)の著者でジャーナリストの福島香織氏だ。今年5月に新疆ウイグル自治区のカシュガル市を20年ぶりに訪れた福島氏は、この地域が「21世紀で最も残酷な監視社会」になったことを実感したという。

「住民は身分証番号と住所、使用しているパソコン、携帯電話やスマートフォンなどの登録を義務づけられており、街中に監視カメラと交番があります。携帯やスマホにはウイグル人専用の監視アプリをダウンロードする必要があり、SNSやメールの内容は警察当局に筒抜けのうえ、GPSで24時間居場所を把握されています」(福島氏)
 
 この地のウイグル人は、AIやIT技術と豊富なビックデータの組み合わせによる「社会信用システム」で徹底的に管理されている。

「例えば首府のウルムチ市では各市民に基礎ポイントが与えられ、その増減によって社会的な信用度が決まります。減点対象になるのは、『宗教知識がある』『毎日礼拝している』『海外留学中の子供がいる』といった項目です。アプリのダウンロードを拒否したり、社会信用システムのポイントが低くなったら、身柄を拘束されて“再教育施設”に入れられる怖れがあります」(福島氏)

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン