『フケ声がいやなら「声筋」を鍛えなさい』(晶文社)の著者で、山王病院国際医療福祉大学東京ボイスセンター・センター長の渡邊雄介医師は、「裏声よりも地声で歌える曲が良い」とアドバイスする。
「裏声を使えばのどの筋肉を鍛えられそうに思えますが、裏声で使う筋肉は嚥下力とは関係ありません。裏声を使っても誤嚥は予防できず、むしろのどを痛めかねません。一方、地声で歌う曲だとのどの筋肉が効果的に鍛えられるため、“地声パート”の多い曲を選ぶといい」(渡邊医師)
歌い方としては、長く歌声を響かせる「ロングトーン」が効率的だ。
「ひと息で長く声を出すには声帯を長時間締める必要があり、のどの筋肉を持続的に活用します。ベンチプレスでいえばバーベルを上げたままの状態のように、のどの筋肉を効率よく鍛えられます。一方で『こぶし』や『ビブラート』はただの歌唱テクニックで、のどを鍛える効果はほとんどありません」(渡邊医師)
有名歌手に多い「ささやきボイス」は逆効果となる可能性がある。
「彼らはトレーニングを積んであの歌唱法を身につけていますが、一般の人が真似をすると、いつもと違う声帯の締め方をするため、声がかれることがあります。徳永英明さんや玉置浩二さんといった有名歌手のようにささやき声で歌うより、小さな声でいいから声帯を震わせて歌うほうが、のどの負担になりません」(西山医師)
渡邊医師は、テンポの速い曲より、ゆったりしたリズムの曲を勧める。
「特に高齢者の場合、アップテンポすぎる曲だとのどが疲労してしまいます。余裕をもって楽しむにはゆっくりと歌い上げるほうがいいでしょう」
※週刊ポスト2019年10月4日号