まず、部屋着や体操着からカジュアルに昇格したスウェットパンツがあります。下手をすると寝間着のまま外出しているように見えますが、若い層を中心に動きやすさとスポーツテイストが評価されて着用者が増えています。

 また、これの派生形ともいえる裾をゴムで絞ったジョガーパンツも定着しました。これはユニクロでも一時期盛んに売られていたので購入した男性も多いことでしょう。さらに夏場は猛暑の影響から半ズボンが定着しました。半ズボンは色や柄が重視されるので、デニム生地である必要がありません。

 そして、一昔前ならオジサンのズボンと見なされていたスラックスも急速にカジュアル市場で着用者を増やしています。こちらも一歩間違えると、スーツの上着を脱いだオジサンに見えなくもないですが、カジュアルで着用すると全体を少しだけフォーマルに見せる効果もあります。特にクールビズが定着した現在となっては、オンオフ兼用できる便利なアイテムです。

 このように、メンズのカジュアルズボンも選択肢を大幅に増やしており、そのどれにも「デニム生地」ないし「デニム風生地」がカラー展開の1つとして差し込まれています。こうなると、ジーンズ単体に再注目されることはかなり難しいと言わねばなりません。

 ファッション的にジーンズ以外の選択肢が増えたことに加えて、動きやすさや吸水速乾、防寒といった機能性でもジーンズを大きく上回っているのが、スラックスやジョガーパンツです。機能性から考えてもジーンズを選ばない人が増えるのは、何ら不思議なことではなくなったのです。

 現在、知名度の高いナショナルブランドジーンズと呼べるのは、「エドウイン」、「リーバイス」、「リー」くらいしか残っていません。1990年代にはこれらに加えて、「ラングラー」や「ビッグジョン」、「ボブソン」も広く流通していましたし、準大手としては「ブルーウェイ」やタカヤ商事の「スウィートキャメル」などもありましたが、これらのブランドは大幅に縮小したり、なくなったりしています。

 その後も多くのジーンズブランドが生まれ、これまでジーンズを扱っていなかったレディースブランドやメンズスーツブランドまでもがジーンズを扱うようになったりしましたが、ジーンズブランドとして売り上げ規模が100億円を越えるようなメーカーは減り(エドウイン、リーバイスは100億円を超えている)、ジーンズの需要は完全に拡散してしまったといえます。

 スキニーブームが終焉した2015年からはワイドジーンズや股上が深いハイライズジーンズなども生まれましたが、これらも大きなブームにはなっていません。数年前にジーユーが100万本を売って有名になったガウチョパンツは、あくまでも形・デザイン・シルエットのことで生地は何でも構いません。ウールだろうが麻だろうが、デニムだろうが、全部まとめて「ガウチョパンツ」なのです。

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