アニプロには檻はない(撮影/高橋進)

 原さんの献身の背景には“救えなかった3匹の犬”への後悔がある。

「保護を始めた頃、センターに殺処分目前の犬が5匹収容されていて、本当は5匹とも引き取りたかったんですが、どうしても当時は2匹しか引き取れなかったんです。

 私は命を選択した。3匹を見殺しにした。その無念さは今も胸から消えていません。だから…というわけではありませんが、いちばん助けを必要としている子たちを救いたい。ガス室やひとりぼっちの檻ではなくて、暖かい部屋で安穏と暮らさせてやりたいと思うんです」(原さん・以下同)

 治療費やえさ代は寄付などもあり、なんとかやりくりしているが、長く猛暑が続いた今夏、3棟つけっ放しの冷房代には泣いた。

 次に案内されたのは、健常犬たちの部屋。盛大に歓待する犬たちをよそに、じっと微動だにしない犬も。「ああいう子は飼いやすいんですよ。信頼を得れば、飼い主だけに忠実だから」と原さん。

 すると、ちょっと大きめのケージから、おずおずと真っ黒な顔が覗いた。

「歌丸、おいで」と原さんが呼ぶと、もそもそと現れたのは、なんとも立派なグレートデン! 艶々と凜々しい立ち姿に反して、上目遣いの哀しそうな瞳が気になった。

「センターに収容された時はガリガリにやせてて…。捨てられたんですよ。手に負えなくなっちゃったんでしょうね。なかなかグレートデンを飼える家庭なんてないですから、里親探しは難しい。やさしい性格のいい子なんですけどねえ」

 最後に案内された部屋は、おむつをして寝たきりの大型雑種犬・ショーンを囲むように、心臓病で闘病中のチワワなどが暮らす。

「寝たきりで動けないんですけど、食事をおいて、頭を支えてやると、ガツガツとよく食べるんです。まだ“生”への執着がしっかりとある。最期まで見守ってやりたい」

◆熟年犬と過ごす穏やかなペットライフがおすすめ

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