地震直後は両エリアの中古マンション価格には地震の大きな影響は見られなかったものの、数か月後から徐々に下落を始めた。物件にもよるが、数年で2割から4割の下落。ただ、2015年頃からそれも回復し始めた。おそらく都心に生じた局地バブルの影響もあったのだろう。現在では、地震直前の水準までは回復していないが、底を脱した観はある。

 今回の武蔵小杉も、タワマン群の資産価値が急激に下落することはないだろう。しかし、影響がゼロとは考えにくい。少なくとも好ましい方向には向かわない。

 まず、現在販売中の新築マンションの売れ行きは確実に鈍る。そして、中古マンション市場では取引が萎む。売りたくてもなかなか買い手が現れない状態になるだろう。

 月日が経てば過去の新浦安・海浜幕張エリアと同じように緩やかに取引数も回復するはずだが、これまでのような値上がり傾向は一切なくなるだろう。当面は、台風以前の相場観を維持するのが精いっぱい。あるいは5%から10%程度は下落する可能性もある。

 そもそも2018年あたりから、首都圏の中古マンション市場は統計に表れていないところで下落基調に転じたと私は感じている。その波との同調もあって、武蔵小杉エリアも当面は軽微ながら下落基調になる可能性が高い。

 人々の記憶というのは、その時々の空気や印象によって強く影響される。台風の記憶が薄れる2年後から3年後までの間に、また同じような被害が武蔵小杉ではないエリアで発生したとしても、「そう言えば、武蔵小杉でも似たような被害があったな」と、人々は今回の出来事を思い出すだろう。そうなると、人気の回復はやや遠ざかるだろう。

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