やや進行したステージIIくらいの胃がんや大腸がんで行われる外科手術でも、負担の少ないものがあると村上さんが続ける。
「『腹腔鏡手術』は苦しくない手術の代表格です。おへそなどお腹に0.5cm~1cm程度の小さな穴を3~4個ほどあけ、そこから内視鏡を挿入。医師はモニターに映し出された内部の映像を見ながら、はさみ、電気メス、鉗子などがついた特殊な器具を操作して手術を行います。
この方法であれば、翌日からそれまでの日常生活と変わらずに歩けるほど負担が軽い。従来の胃や大腸の手術はお腹を20~30cmほど切開し、直接手を入れて手術を行っていましたが、ステージIIくらいまでの大腸がんや胃がんであれば大きく切開しないことが常識となりつつあります」
手術以外の治療も、痛みや苦痛の少ないものが出始めている。兵庫県立粒子線医療センター院長の沖本智昭さんの解説。
「これまでのがん治療は『手術』『放射線』『抗がん剤』の3つで“3大療法”といわれてきましたが、最近になり“第4の治療法”が確立しつつあります。それが、新薬オプジーボに代表される『免疫療法』です。正常な細胞まで攻撃してしまう抗がん剤とは異なり、がん細胞だけを攻撃できる体への負担が小さい治療法です。同様に、放射線治療も体にやさしい方法が開発されています」
その中でも特に最近注目されているのは、粒子線治療だという。
「従来のX線による放射線治療では、放射線が体を突き抜けて正常な細胞を死滅させる。ところが粒子線は体を突き抜けず、当てたい場所に照射できるので、がん細胞をピンポイント攻撃することが可能です。粒子線治療は、がんの周囲の正常細胞を傷つけない、体にやさしい画期的な技術です」(沖本さん)
加えて、日常的な痛みを緩和してくれる医療グッズも進歩している。
「最近は“がんパッチ”といわれる貼る痛み止めが普及しています。のみ薬と違って服用し忘れることがないうえ、胃に負担がかからないのもいい。認知症薬や精神科の薬にも貼り薬が出ているため、服薬だけでお腹がいっぱいになってしまう高齢者などは検討の余地があるでしょう」(村上さん)
※女性セブン2019年11月7・14日号