芸能

“薄幸役”木村多江の対抗に戸田菜穂が浮上 2人の違いとは?

”薄幸役”が似合う戸田菜穂

 不幸な女性を演じさせたら木村多江の右に出るものはいない――。長らくそう言われてきたが最近、薄幸役女優として戸田菜穂が急浮上している。その特徴と木村との違いとは? 

 * * *
 とにかく出てきた人間が次々非業の最期をとげるというおどろおどろしい展開になっていったNHKプレミアムドラマ『怪談牡丹燈籠』(最終回11月3日に再放送)。中でも一番不幸なのは、戸田菜穂だった。

 戸田が演じたお米は、ヒロインお露(上白石萌音)の世話係として母を亡くしたお露を大切に育ててきた。なのに、お露は二枚目の浪人・萩原新三郎(中村七之助)に恋し、とうとう焦がれ死にしてしまう。あまりの悲しみにお米は、後追い自殺。その後、彼女は、夜な夜な亡霊となって新三郎の寝所に現れるお露に付き添い、牡丹燈籠を手にカランコロンと下駄の音を響かせるのである。

 幽霊に付き添いの幽霊がいるというのも『牡丹燈籠』ならでは。過去の『牡丹燈籠』作品では、目の周りを真っ黒にしたパンダもびっくりの奇怪な亡霊お米が、ひしと抱き合うお露と新三郎の横にしっかり座り込んだりして、いくら付き添いでもそれはちょっと…と思ったものだ。

 今回の戸田お米は目を金色に光らせて、手も触れずに金箱のふたを開け、小判を降らせるなど妖しく美しいモード。だが、お露の願いをかなえるためなら、強欲な人間に「言うことを聞かぬなら、憑り殺そうぞ!!」と耳まで裂けた口から牙をむき出して威嚇する。ひえーっ。生きてるときは、お露の父(高嶋政宏)を誘惑した悪女お国(尾野真千子)に意地悪されつつも、控えめに耐えてきたのに。化けたら強烈だ。

 戸田は近年、不幸な役を演じ続けている。元祖不幸が似合う女優といえば、木村多江だが、戸田とは微妙に違う。木村の場合は、『犬神家の一族』(2004年、フジテレビ系)で鬼の形相の富豪犬神家三姉妹に虐待されたり、『大奥 第一章』(2004年、フジテレビ系)では将軍の正室なのに相手にされず大奥ひとりぼっち。『チェイス~国税査察官~』(2010年、NHK)では乗った飛行機が墜落するし、映画『ゼロの焦点』でも崖から突き落とされていた。自ら被害者になるパターンが多い。

 一方、戸田は昨年、『アンナチュラル』(2018年、TBS系)では、夫を過労が原因のバイク事故で亡くし、『Aではない君と』(2018年、テレビ東京系)では離婚後、ひとりで育てていた14歳の息子が同級生を殺害するという大事件を起こして疲れ果て、『不惑のスクラム』(2018年、NHK)では、ある事件で実刑を受けた夫と音信不通に。次々大変な目にあっている。それも誰かの巻き添えになるパターンばかりだ。お米も完全に巻き添えだし。

 木村は泣いてる間もなく崖から消えたりするが、戸田は事件が起きてからが見せ場となる。

「こんなに戸田菜穂を泣かせちゃダメだろ!!」と視聴者に思わせるところがポイントだ。もっとも、『怪談牡丹燈籠』では、化けて出たお露とお米よりも、「地獄へ行く覚悟はおありか」と若い不良侍(柄本拓)と共謀して薄笑いを浮かべつつ、殺し、横領、逃亡と罪を重ねるお国のほうがよっぽど恐ろしかった。お米が牙をむいてもお国には負けてたかも。やっぱり泣くのは戸田菜穂…そう思わせるところが、彼女の持ち味といえる。
 

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン