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2019.11.05 16:00  週刊ポスト

東急グループ築いた五島慶太氏、鬼気迫る辣腕伝説の数々

 そんな強盗慶太の痛恨事は1938年の三越乗っ取り事件だった。五島は老舗の経営陣を吊し上げ、激しい攻勢をかけた。だが、政財界の賛意を得られず断念する。彼が手を引いた直後に、三越トップが日比谷の街角で死体となって発見された──死因は急性疾患だったものの、暗殺説や心労説が飛び交い、五島には非難が殺到した。

 それでも五島が傑物だったことは間違いない。現代に継承されるビジネスモデルを成功させている。

 日本屈指の高級住宅街として有名な田園調布は、五島なしに存在しない。大正末期、彼は45万坪という広大な土地に鉄道を走らせ、都心と郊外を繋げてみせた。これにより欧州で提唱された田園都市建設、庭園都市構想が東京で実現する。知識階級の労働者が、都会で働き郊外の自宅で快適に暮らす斬新なライフスタイルが誕生したのだ。

 しかも五島は田園調布を安売りしていない。当初の宅地は一区画300坪という規模で販売されている。同時に道路計画と緑化計画を徹底し、公園や広場、街路樹を整備したのも慧眼だった。おかげで、田園調布は豪奢な邸宅がゆったりと並ぶセレブな街並みとなり、高級感がいっそう増した。

 田園調布のノウハウは、今日の東横線や田園都市線でのハイソなイメージ醸成に活きている。両路線が「住みたい沿線」ランキングで上位なのは周知のこと。ただし、さすがの五島も令和の巨大台風で田園調布はもとより、二子玉川や武蔵小杉が浸水災害に遭うことまで予測できなかったが……。

 五島は「すべての事業は沿線住民の生活向上のため」と強調してやまなかった。その手腕は、「片田舎」と揶揄されていた渋谷を、現在の繁栄に導いたことでも歴然としている。ターミナル駅にはデパートをはじめ商業施設、郊外に宅地やリゾート施設という“鉄道経営の鉄則”を実証したことも大きい。

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