ありていにいえば、遊び人風でお洒落な剛さんと、真面目で優等生タイプの慶子さん。慶子さんは「目鼻立ちが地味」なので、化粧に毎日30分かけていた。外見的な雰囲気は異なる二人だったのだろう。だが、内面的にはいくつも共通があった。剛さんも慶子さんも仕事が好きで、出世欲も強かった。子育てには、慶子さんの実家の助けを借りながら、熱心な教育パパ・ママになった。
◆息子の母親か、ひとりの働く女性としてしか見られていない
「子育てに関しては、彼とすごく意見が合った。それはありがたかったと思っています。子供の教育にお金を惜しまない、というのは、二人とも一致していました」
仕事も出来て、子供にとっても良い父親だった夫
そんな仕事と子育てにめまぐるしい日々も、一人息子が小学校に上がると、少しずつ落ち着いていった。と同時に、夫の言動が気になり始めた。
「深夜帰宅の日が増え、土日も仕事やゴルフで、どちらか一日は家にいない。その分、仕事は順調のようで、それはそれで私も鼻が高かったんですが、家にいる日は子供と遊んでいて、夫婦の時間がまったくなくなっていることにストレスを感じ始めました」
たまには二人で飲みに行こうよと誘っても、色よい返事は来ない。剛さんと息子の好きなスポーツ観戦やゴルフに、慶子さんはほとんど興味を持てないこともあり、いつしか子供の話題以外に、会話はなくなっていた。
「仕事の相談は聞いてくれるんです。的確なアドバイスもくれます。そういう意味では信頼できる人間。でも、息子の母親か、あるいはひとりの働く女性としてしか見られていないと感じて、どうしてもイライラしてしまうようになって」
次第にケンカが絶えなくなった。もっと家に居てほしいと望む慶子さんに対し、子供のことは協力している、それ以外の時間は自由にさせてほしいと主張する剛さん。「二人の時間」をめぐる攻防は平行線を辿った。
イライラが沸点に達したある日、慶子さんは剛さんの携帯を見てしまった。そこには女性からのメールがたくさん来ていた。突き詰めるとすぐに剛さんは白状した。
「浮気している、ごめん」