国内

なぜ、「毒母」を題材とした映像作品が急増しているのか

“毒親”を題材とした映像作品が急激に増加(写真/PIXTA)

 昨年『万引き家族』でカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞した是枝裕和監督がメガホンを取った映画『真実』が公開中だ。物語はフランスの国民的大女優が自伝本「真実」を出版したところから始まる。それを読んだ娘が、本来はわがままで尊大な母の、嘘だらけの美談にあきれて母を問いただす。だが、母は笑い飛ばすばかり。

「ママ、これのどこが“真実”よ! 私を家の外に閉め出したことを忘れてデートに行ってたじゃない」──。

 近年、“毒親”“毒母”といった言葉をよく耳にするようになった。暴力や育児放棄といったわかりやすい“虐待”でなくとも、過度な干渉や身勝手なふるまいで子供を傷つけ、支配しようとする親も、子供にとっては有害だという事実が、広く知られるようになったのだ。

 明らかな虐待行為とは一線を画すものであることや、「親は感謝すべき存在」という旧来の価値観で隠れていた問題が、徐々に浮き彫りになってきたといえるだろう。“毒親”の概念に触れて、「自分だけではなかった」と共感する人が続出しているのだ。母娘関係専門カウンセラーの高橋リエさんが指摘する。

「最近、『毒親後遺症』ともいうべきトラウマに悩まされる女性が増えています。母親と電話するだけで動悸がする、実家に行くと必ず体調が悪くなる、ママ友や目上の女性に苦手意識を持つケースも。親の影響というのは、非常に大きいのです」(高橋さん)

 そうした世相を反映してか、このような“毒母”を題材とした映像作品は2017年頃から急激に増えている。

「嫌い。嫌い。お母さんがずっと。罪悪感あおって言うこと聞かせようとするところとか、外ではいい人ぶるところとか、自分もできないようなこと、私に期待するところとか、嫌い。だけど、お母さん、かわいそう。独りぼっちだから。(中略)ごめん。私、お母さんのためには生きられない。自分で何とかして──」

 7~9月に放送されたドラマ『凪のお暇』(TBS系)もその1つ。「空気を読む」ことに疲れた28才OLの大島凪(黒木華)が、職場も恋人もSNSもすべて投げ出し、新たな人生を再出発させるまでを描いた物語で、毎週のようにSNSでトレンド入りするほどの人気を博した。

 冒頭は、不満を爆発させた娘の凪が、母親の夕(片平なぎさ)に放ったせりふだ。凪の母は、娘を言葉でコントロールしてきた。台風被害に遭った実家を見舞った凪に修理費用の支払いを求める場面でも、見積書をこれみよがしに見せる。

「あ、いいのよ、凪は心配しなくて。あちこちに頭を下げてなんとかお金を借りて、一生懸命働いて少しずつ返していくから、大丈夫…」

 娘に罪悪感を植えつける言葉の効果はてきめんで、凪は夢のために貯めていたお金を母親に渡してしまう。

関連記事

トピックス

第一子を出産した真美子さんと大谷
《デコピンと「ゆったり服」でお出かけ》真美子さん、大谷翔平が明かした「病院通い」に心配の声も…出産直前に見られていた「ポルシェで元気そうな外出」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「王子と寝ろ」突然のバス事故で“余命4日”ののち命を絶った女性…告発していた“エプスタイン事件”【11歳を含む未成年者250名以上が被害に】
NEWSポストセブン
日曜劇場『キャスター』(TBS系)で主演を務める俳優の阿部寛
《キャスター、恋は闇…》看板枠でテレビ局を舞台にしたドラマが急増 顕著な「自己批判や自虐」の姿勢 
NEWSポストセブン
人気シンガーソングライターの優里(優里の公式HPより)
《音にクレームが》歌手・優里に“ご近所トラブル”「リフォーム後に騒音が…」本人が直撃に語った真相「音を気にかけてはいるんですけど」
NEWSポストセブン
世界中を旅するロリィタモデルの夕霧わかなさん。身長は133センチ
「毎朝起きると服が血まみれに…」身長133センチのロリィタモデル・夕霧わかな(25)が明かした“アトピーの苦悩”、「両親は可哀想と写真を残していない」オシャレを諦めた過去
NEWSポストセブン
キャンパスライフをスタートされた悠仁さま
《5000字超えの意見書が…》悠仁さまが通う筑波大で警備強化、出入り口封鎖も 一般学生からは「厳しすぎて不便」との声
週刊ポスト
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
エライザちゃんと両親。Facebookには「どうか、みんな、ベイビーを強く抱きしめ、側から離れないでくれ。この悲しみは耐えられない」と綴っている(SNSより)
「この悲しみは耐えられない」生後7か月の赤ちゃんを愛犬・ピットブルが咬殺 議論を呼ぶ“スイッチが入ると相手が死ぬまで離さない”危険性【米国で悲劇、国内の規制は?】
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン