W杯デビューとなった19歳の西田有志も獅子奮迅の活躍を見せた。西田は高校3年生でVリーグ男子最年少デビューを果たした期待のホープで、サウスポーから繰り出す弾丸サーブを決めた後の“咆哮”がウリ。

 カナダ戦では最終第5セット9対9というヒリヒリする状況で、観客全員が“ここでスーパーサーブを決めてくれ”と念じる中、6連続得点のうち5本のサービスエースを決めて、チームに劇的な勝利をもたらした。あまりに出来過ぎの展開に、ツイッター上では「漫画だとしてもやりすぎ」と騒がれたほどだ。

「石川の超インナースパイク」を牽引力に勝ち進んだ男子バレーだったが、残念ながら話題となるのはラグビーW杯の「姫野のジャッカル」ばかりだった。「吼える男・西田」は「笑わない男・稲垣」の存在感に圧倒され、「龍神NIPPON(*注1)」の注目度は「ジェイミー・ジャパン」に遠く及ばなかった。フタを開けてみればテレビやスポーツ紙、一般紙のバレー報道はほんのわずかで、大会日程が丸かぶりのラグビーに“全部持っていかれた”のだ。

 もともとバレーは4年間にグラチャン、世界選手権、W杯、オリンピックと世界大会が多く、世界大会は4年に1度のW杯のみというラグビーより飽きられやすい面があるかもしれない。関係者の中には、「米津玄師にテーマ曲を作ってもらいたかった……」と嘆く者(*注2)もいて、「バレー協会の広報体制がひどい」と報じた週刊誌もある。

「来年はいよいよ東京五輪の本番なのに7人制ラグビーに注目が集まり、日本伝統のバレーボールがなかなか盛り上がらないことに危機感を抱く関係者は少なくありません」(前出・スポーツライター)

 それでも今大会に開いた花は大きな希望となる。振り返れば、ラグビー日本代表もW杯開幕までの期待度は決して高くなかったが、本大会まで積み上げたハードワークを励みに、自分と仲間たちを「信じる心」を持ち続け、世の中の評価を一変させた。

 石川・西田という2枚看板と全員バレーを武器にして、上昇気流に乗ったまま2020東京五輪まで突っ走る──それができれば、男子バレーにとって1972年ミュンヘン五輪の金メダル以来48年ぶりのメダル獲得という、「ビクトリーロード」が見えてくるはずだ。

●取材・文/池田道大(フリーライター)

【*注1:龍神NIPPON/2009年に一般公募から選ばれた全日本男子バレーチームの愛称。ちなみに全日本女子バレーチームは「火の鳥NIPPON」】

【*注2/歌手の米津玄師はラグビーをテーマにした池井戸潤原作のドラマ『ノーサイドゲーム』のテーマ曲『馬と鹿』を作詞作曲。今大会中もラグビー特集のBGMとして多用された】

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