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法務・検察トップの検事総長は、オール検察の捜査の指揮監督権という強い権限を持つ。政界に汚職疑惑が浮上すれば、政治家にとって“最大の敵”となる。それだけに政治家は検事総長に親しい人物を据えて、検察ににらみを利かせたい。
現在の稲田検事総長は来年8月に65歳の定年を迎え、後任の有力候補には、検察ナンバー2の黒川弘務・東京高検検事長と林真琴・名古屋高検検事長という2人がいる。法務・検察首脳部の本命は林氏の検事総長就任と目されている。そこに政治介入の動きがある。検察人事に詳しいジャーナリスト・伊藤博敏氏が語る。
「菅官房長官は官僚の人事権を握ることで現在のポジションを築いてきた。その菅さんの覚えめでたいのが黒川検事長です。黒川氏はかつて甘利明・元経済再生相の口利き疑惑の捜査では、特捜部ににらみを利かせて甘利氏を不起訴に持ち込んで政権を守ったとも検察内部で言われていた。菅さんにすれば、黒川氏を検事総長に据えて法務・検察を完全に掌握したい。しかし、それにはネックがある」
高検検事長の定年は検事総長より2年早い63歳。黒川氏は来年2月に定年を迎え、退官しなければならない。総長への道を断たれてしまうのだ(林氏は黒川氏と同期入省だが、年齢は1歳下)。
「黒川氏を検事総長に据えるには、稲田現総長には定年前に退任してもらわなければならない。人事のタイムリミットは12月とされ、菅さんが腹心の河井氏を法務大臣に起用したのは、そうした検察人事の根回しのためという見方がなされていた」(同前)
そのタイミングで怪文書が政界に流れた。法務行政関係者が神経を尖らせたのは、怪文書の背景に“稲田総長を早く交代させたい”との政治的意図を感じ取ったからではなかったか。
しかし、逆に河井氏のスキャンダルが発覚し、辞任に追い込まれた。菅氏にすれば検察を掌握する有力な手駒を失ったかたちになる。