奇しくも、その河井氏の辞任の決め手になったのも別の“怪文書”だった。河井氏は先の参院選で当選した妻の案里氏がウグイス嬢に違法な報酬を支払っていたという週刊文春の報道(10月31日発売号)で辞任したが、同誌の締め切り前に、完成前の記事のコピーが政界やマスコミに流出したのだ。政治アナリスト・伊藤惇夫氏も週刊文春発売の3日前に記事コピーを入手したと明かす。
「タイトルも写真もない本文だけの記事でした。こんなに早く出回るのは異例なことで、事実上、記事掲載号が発売される前に辞任が決まった」
河井氏や菅原氏の疑惑は大臣辞任で終わりではない。いずれも公選法違反で刑事告発され、これから捜査が行なわれる可能性は高い。
そうなると、菅陣営にとっては、検察を押さえることがこれまで以上に重要になる。ところが、安倍首相は河井氏の後任に、菅氏に近い人物ではなく、自身の出身派閥である細田派の森雅子氏を起用した。
「検事長人事の主導権を安倍首相側が握ったことで、黒川氏の検事総長就任は厳しくなったと見ることもできます。菅氏の法務・検察に対するコントロールが弱まるようなことになれば、菅原氏や河井夫妻の捜査の行方にも影響する可能性がある」(前出・伊藤博敏氏)
安倍vs菅の戦いの第2ラウンドは検事総長人事、つまり菅側近議員の立件をめぐる綱引きとして始まった。
※週刊ポスト2019年11月22日号