数年前、接待で利用していたクラブのママから枕営業で逆接待され、毎月2回くらい関係を持っていた社長の夫人が、ママを相手に提起した裁判がありました。東京地裁は、クラブのママやホステスが「枕営業」を繰り返しても「売春婦の場合と同様に、顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害するものではない」ので、妻が精神的苦痛を受けても、不法行為は構成しないとして請求を棄却しました。
この判決は、一時話題になりました。しかし、親密な交際になってしまうと、内心は「枕営業」のつもりでも、不貞関係は否定できません。営業目的の交際だろうと、婚姻共同生活の平和の侵害行為に当たるとして、慰謝料の支払いを命じた例もあります。結局、どんな付き合いをしていたか。愛情など持たず枕営業のつもりであっても、安心できません。
【プロフィール】竹下正己●1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2019年12月6日号