新型特急「ひのとり」は伊勢志摩といった観光地を走る観光特急ではなく、名古屋駅-難波大阪駅間で運行される。近鉄はビジネスだけではなく、幅広い利用者を想定しているようだが、「ひのとり」はビジネス特急という趣が強い。そして、「ひのとり」は「しまかぜ」に代わるエース特急になることが予想される。
「『ひのとり』は2020年度中に11編成が完成する予定です。そのため、来年度中には名阪間を走る特急の多くが『ひのとり』に置き換わります。そうしたことを踏まえれば、『ひのとり』が近鉄のエース特急と思われるかもしれません。しかし、社内では『ひのとり』をエース特急とは捉えていません。近鉄は常に新たな特急列車の可能性を模索しているので、絶えず新しい特急の開発を続けているからです」(同)
いくつもの私鉄を統合した歴史的な経緯から、近鉄の路線には1435ミリメートルと1067ミリメートルという2つの軌間が混在する。軌間が異なる路線に、ぞれぞれの電車が乗り入れはできない。例えば、大阪難波駅を発着する「しまかぜ」は、1435ミリメートル軌間しか走ることができず、近鉄がもうひとつのターミナルとしている阿部野橋駅には入線できない。阿部野橋駅の軌間は1067ミリメートルになっているからだ。こうした異なる軌間には、それぞれの軌間に対応した別々の車両を用意する必要がある。
異なる軌間という不便を解消するべく、近鉄はどちらの軌間でも走ることができるフリーゲージトレインの開発を表明している。フリーゲージトレインの開発はJRも進めているが、実用段階には至っていない。それどころか、JRは対費用効果などを理由にしてフリーゲージトレインの開発に消極的になっている。
そうした中、近鉄はフリーゲージトレインの開発を進める。フリーゲージトレインが実用化すれば、当然ながら新しい近鉄特急が誕生するだろう。