名門イェール大学の学生という一面も持つネイサン・チェン選手(中央)写真/アフロ

◆演技構成点では羽生選手が勝利

 先のGPファイナルのショートプログラムの翌日、羽生選手は公式練習で、フリーのプログラムには入っていないクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)を練習し始めた。着氷まで近づいて転倒したジャンプが3度。ひやりとするシーンもあった。

「羽生選手のコーチがトラブルに遭い、合流が遅れていたんです。本来なら、試合前にプログラムにない4回転半の練習をコーチが許すはずがない。羽生選手は“運命主義者じゃないけど、コーチがいないことに何らかの意味があるはず”と考えて、勝手に4回転半の練習を始めたそうです。彼は4回転半を“王様のジャンプ”と称しています。ネイサン選手に勝つためには、どうしても必要だと考え、コーチ不在をいいことにやってしまったのでしょう」(前出・フィギュアスケート関係者)

 現在、羽生選手のコーチは、カナダ人のブライアン・オーサー氏が務めている。2012年から師事して、2度の五輪王者に導いてくれた恩師だ。

「オーサー氏を筆頭にジャンプ担当のジスラン・ブリアン氏やステップ・ターンを担当するトレイシー・ウィルソン氏など、約20人からなる『チーム・ブライアン』と長年にわたって関係を築いてきました。羽生選手自身もカナダに拠点を置いています。

 そんな中で、ロシア人コーチへの“変更”を示唆したことは、ハレーションも小さくないはずで、関係者を驚かせました。オーサー氏はここ数年、体調不良もあって海外遠征に帯同できないこともあります。今回はジスラン・ブリアンコーチがついていました。フィギュア界ではコーチの変更はよくあることですが、羽生選手が変えるとなれば大きなニュースになるでしょう」(前出・フィギュアスケート関係者)

 もちろんチーム・ブライアンと羽生選手の絆は深く、2年後に迫った北京五輪を前に、このタイミングでコーチの変更はリスクも伴う。現実的ではないという声が大半だろう。しかし、羽生選手が王者になるためには“王様のジャンプ”が必要不可欠なのも事実だ。

 仮に4回転半が実現できたとしたら、ネイサン選手を圧倒できる可能性は充分出てくる。

「先のファイナルで大差がついたのは、技術点の部分です。フィギュアの得点はジャンプやスピンなどで加点される『技術点』と、演技力やスケーティング技術からなる『演技構成点』から付けられます。

 羽生選手はジャンプの失敗などがあった一方、ネイサン選手はほとんど成功させたため、大差がついた。しかし、演技構成点では羽生選手の方が上回っていたんです。

 ネイサン選手はこれまで4回転半に挑んだことはありません。今後、羽生選手が4回転半をものにすることができれば、2年後の北京五輪では圧勝するでしょう。再び絶対王者に返り咲くことも可能。周囲には『全然引退しないですよ』と公言していますし、まだまだ羽生選手は勝つために成長していくはずです」(前出・フィギュアスケート関係者)

 次回、ネイサン選手と相まみえるのは2020年3月の世界選手権。羽生選手は、その大会で「4回転半をプログラムに入れたい」と語っている。

 雪辱なるか──。

※女性セブン2020年1月1日号

GPファイナルでは、いつも必ず側にいるブライアン・オーサーコーチが不在だった(写真/共同通信社)

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