芸能

『G線上のあなたと私』が示唆した「サードプレイス」の重要性

好評のうちに大団円

 人生は重層的にできている。家庭も職場も大切だが、日々の生活が潤うためにはそれだけでは十分ではないのもまた事実。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 ありそうで無かった、新しい空気が流れていた。人間関係に爽やかな風が吹いたように感じた。12月17日に最終回を迎えたドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)は、ありふれた日常の中の「新しい透明な時空間」を見せてくれたドラマだったのではないでしょうか。

 主な登場人物は専業主婦の幸恵(松下由樹)、婚約破棄されたアラサーの也映子(波瑠)、男子大学生の理人(中川大志)。主婦・幸恵は、姑と同居し家事に介護にと気の緩む時間もない。夫も浮気し自分を裏切る。一方、失業中の也哉子も進む先が見えず不安にさらされている。そして片思いの恋に破れた不器用な理人。面識の無いその三人が、「バイオリンのお稽古場」で出会い、練習を通してほんわりとした柔らかな関係を作っていく。

 自分を縛るものから距離をとる場──それがこのドラマでは「バイオリンのお稽古場」として設定されていました。見ていて思い浮かんだのが「サードプレイス」という言葉です。アメリカの社会学者レイ・オルデンバーグが提唱した「サードプレイス」とは、自宅とも職場とも隔離された中間的な空間のこと。

 その「サードプレイス」の特徴とは、まず参加者の肩書きが必要ないこと。まっさらな状態で人と人とが出会う場所。それだけでなく、人を「もてなすこと」も要求されない。配慮は必要であっても、ヨイショはいらない。サードプレイスでの会話は協調的で、遊び場的な要素もある。そうした中立的な空間が現代を生き抜いていく人には必要だということを、社会学者オルデンバーグは提唱したのでした。

 そう、常に利害関や競争にさらされているのは誰だってキツイ。職場がツライからと言って、すぐに家に帰るのもまた別の意味でキツイ。あるいは、主婦が家庭以外に居場所が無いというのもツライ。ふと立ち寄れる「サードプレイス」が、いかにかけがえの無い場所なのか。ドラマで描かれたバイオリンのお稽古場は「人を浄化する第三の場」でもあったのでしょう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
亡くなったアンナ・ケプラーさん(TikTokより)
巨大クルーズ船で米・チアリーダー(18)が“謎の死”「首を絞められたような2つのアザ」「FBIが捜査状況を明かさず…」《元恋人が証言した“事件の予兆”》
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
決定戦で横綱を下した安青錦(写真/JMPA)
【最速大関・安青錦の素顔】ウクライナを離れて3年、なぜ強くなれたのか? 来日に尽力した恩人は「日本人的でシャイなところがあって、真面目で相撲が大好き」、周囲へ感謝を忘れない心構え
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
主演映画『TOKYOタクシー』が公開中の木村拓哉
《映画『TOKYOタクシー』も話題》“キムタク”という矜持とともにさらなる高みを目指して歩み続ける木村拓哉が見せた“進化する大人”の姿
女性セブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト
CM露出ランキングで初の1位に輝いた今田美桜(時事通信フォト)
《企業の資料を読み込んで現場に…》今田美桜が綾瀬はるかを抑えて2025年「CM露出タレントランキング」1位に輝いた理由
NEWSポストセブン
亡くなったテスタドさん。現場には花が手向けられていた(本人SNSより)
《足立区11人死傷》「2~3年前にSUVでブロック塀に衝突」証言も…容疑者はなぜ免許を持っていた? 弁護士が解説する「『運転できる能力』と『刑事責任能力』は別物」
NEWSポストセブン