その朴政権を「親日派」だと徹底的に批判して政権を奪い取った文大統領が、日本側のきわめて合法的な「日韓基本条約を無視するな」という要求をなぜ黙殺するのか、これでおわかりいただけるかと思う。
しかし大人はそうでも、若者は違うのではないかという期待を当初私は抱いていた。若者は常に現状に批判的だし、感情に走る大人に比べて理性的で論理的な面もある。視野も広い。そこで伝手を求めて韓国の大学生を招き、ソウルの日本料理店で酒を飲みながら意見を交換した。ちなみにその日は「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」、つまり8月14日の夜で他に日本人客はいなかったが、韓国人客で盛況だった。
ちょうど鬼畜米英を唱えていたころの日本にアメリカ映画や音楽のファンが結構いたように、今の韓国にも日本文化のファンは大勢いる。また日本政府に対してはともかく、個々の日本人に対しては強い反感を持っている人は少ない。それがせめてもの救いではあるのだが、結論から言えば私は若い世代にも失望した。
どうやら完全に左翼勢力に洗脳されていると言ってもいい状態なのである。もちろん少数のサンプルで全体の傾向を即断してはいけないということも重々承知しているのだが、その後周辺取材をしてみた結果も同じだ。
どういうことかと言えば、まず若者は北朝鮮に対する親愛度が異常に高いということだ。1950年の朝鮮戦争は北朝鮮が侵略目的で韓国に対して奇襲を仕掛けたことで始まった。韓国はアメリカ軍などの応援も得てようやく北朝鮮軍を撃退したものの、兵士と一般国民合わせて韓国人100万人近くが犠牲になった。平たく言えば、北朝鮮の卑怯な不意打ちで殺されたのである。
ところが、この「父祖の仇」であるはずの北朝鮮に対し若者たちは憎悪どころか親近感を抱いている。そして、それ以上に「絶対悪」として認識しているのが日本なのである。恐るべき事態だ。それほど若い世代に対する反日洗脳、「恨」思想の刷り込みは進んでいるということだ。