安倍晋三首相は12月13日、東京都内で開かれた講演で、問題視されている「桜を見る会」について、「政策論争以外の話に多くの審議時間が割かれている」と述べ、「国民のみなさまに大変申し訳なく思っている」と謝罪した。首相や官邸に向けられた疑惑に対し、説明責任を果たしていないのは自分たちだが、そこはスル―。まるで野党の追及によって時間を使ってしまったとでも言いたげだ。責任転嫁と問題のすり替えで、自分たちを正当化している印象が強い。

 9月、千葉に甚大な被害をもたらした台風15号。千葉県の対応の遅れと、災害本部設置当日に森田健作知事が別荘に公用車で向ったことが問題となった。これに対し森田知事は、「別荘ではなく自宅」と説明。「私用車に乗り換えプライベートで被害を視察した」と、唇を舐めたり大仰に表情を作ったりしながら述べた。

 さらにその視察では、メモも写真も「頭に残した」だけ。視察している知事を見た者もいない。森田知事はこのやり方を「これは私の政治スタイル」と、声の抑揚をつけ悪びれることもなく言ってのけた。どう追及されても言い逃れ的な自己弁護を繰り返し、大規模停電の復旧が遅れた東京電力にクレームをつける始末であった。

 自己正当化は、時に政治家としてのあり方も問う。国後島への「ビザなし交流」訪問団の一員として参加し、元島民の訪問団長・大塚小弥太さんに「戦争しないとどうしようもなくないですか」と酒に酔ってこう発言した丸山穂高衆院議員。一度は謝罪したものの、失言・暴言だったという意識は本当はなかったのだろう。辞任を促されると、「(戦争発言は)賛否を聞くという形での発言」「謝罪すべきは(戦争発言自体ではなく)あの場での不適切さ」と問題をすり替え、「私が辞めることで前例を作ってしまいかねない」と辞職勧告決議を非難。都合よく問題を解釈し自分を正当化した。いまだ議員のままである。

 例え辻褄が合わなくても、言い逃れやこじつけでも、自分が正しいと言い切ってしまう。これではまるで「ナイーブ・リアリズム」の極致みたいだ。人は自分の判断が正しく、自分の物の見方や感じ方は客観的だと信じる傾向がある。自分は冷静に判断しているため、自分と同じように考えられない人がおかしいと思うのだ。こうした傾向を「ナイーブ・リアリズム」という。これもまた、謝罪会見で強く出ると、世間の反感を買うだけである。

 さて、ナイーブ・リアリズムと聞いて、真っ先に思い浮かぶのはこの人以外にいないだろう。それは韓国の文在寅大統領。日韓関係がどうなろうとも、自分を正当化することを優先させた彼が、結局は国民の失望を買い支持率低下に追い込まれた姿は、今年最も印象的だったのではないだろうか。

関連記事

トピックス

復興状況を視察されるため、石川県をご訪問(2025年5月18日、撮影/JMPA)
《初の被災地ご訪問》天皇皇后両陛下を見て育った愛子さまが受け継がれた「被災地に心を寄せ続ける」  上皇ご夫妻から続く“膝をつきながら励ます姿”
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
武蔵野陵を参拝された佳子さま(2025年5月、東京・八王子市。撮影/JMPA)
《ブラジルご訪問を前に》佳子さまが武蔵野陵をグレードレスでご参拝 「旅立ち」や「節目」に寄り添ってきた一着をお召しに 
NEWSポストセブン
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
オンラインカジノの件で書類送検されたオコエ瑠偉(左/時事通信フォト)と増田大輝
《巨人オンラインカジノ問題》オコエ瑠偉は二軍転落で増田大輝は一軍帯同…巨人OB広岡達朗氏は憤り「厳しい処分にしてもらいたかった。チーム事情など関係ない」
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
国技館
「溜席の着物美人」が相撲ブームで変わりゆく観戦風景をどう見るか語った 「贔屓力士の応援ではなく、勝った力士への拍手を」「相撲観戦には着物姿が一番相応しい」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【20歳の女子大生を15時間300万円で…】男1人に美女が複数…「レーサム」元会長の“薬漬けパーティ”の実態 ラグジュアリーホテルに呼び出され「裸になれ」 〈田中剛、奥本美穂両容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン
前田亜季と2歳年上の姉・前田愛
《日曜劇場『キャスター』出演》不惑を迎える“元チャイドル”前田亜季が姉・前田愛と「会う度にケンカ」の不仲だった過去
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 自民激震!太田房江・参院副幹事長の重大疑惑ほか
NEWSポストセブン