2019年11月には、通院先の鹿児島県内の精神科医から性的搾取を受けたことを原因として自殺したという女性(当時27)の遺族らが都内で会見を開き、医師と患者が性的関係を持つことを法律で禁止するよう求めた。遺族らは、主治医だった精神科医が不適切な投薬や懲罰的な断薬を繰り返して女性を支配していたと主張している。
もちろん、知り合ったのは精神科医と患者としてであっても、治療終了後に恋愛・結婚へと発展するケースもあるだろう。本人たちが望んだ生活を送るならば、出会ったきっかけにこだわる必要はない。ただ一方で、精神科医と患者の関係は構造的に様々な問題をはらみやすいので、個々の医師の倫理観のみに委ねるのではなく、明確な規則を定めるべきではないかとの声も聞こえる。
「海外では法律などで規制されていること自体、裏を返せば、この問題がいかに根深いかを物語っています。まずは日本でも、精神科医と患者には転移性恋愛が起こり得ることを多くの人に知ってほしいですね」(片田氏)
●取材・文/池田道大(フリーライター)