「私の入った工業大学も当時はそれなりの偏差値でした。理系というだけで文系より上でしたからね。それがいまやFランですよ。バカ大扱い。そりゃ当時だって凄い大学ってわけじゃないけど、全入でもなければバカでもない。おまけにせっかく入っても在学中にバブルが弾けて散々です」
偏差値と文系理系をいまだにこだわるのも団塊ジュニアの特徴だ。私は少し意地悪なことを聞いてみた。
「Aさん、40過ぎたおっさんが自分のお子さんの話ならともかく、偏差値とか文系理系とか、どうなんでしょう」
Aさんはその質問にたじろぐこと無く、ナンをラッシーで流し込む。
「なんかこだわっちゃうんですよね、そういうふうに生きてきましたから。みんなそうでしょ」
Aさんは古参2ちゃんねらー(※日本最大の匿名掲示板2ちゃんねる、現5ちゃんねるユーザー)でもあり、いまでも文系叩きが大好きだという。最近の主戦場はYahoo!ニュースのコメント欄、通称ヤフコメ。政治には興味なく関心事はもっぱら学歴だが、高校時代にちやほやされていた体育系部活の連中が嫌いなので、スポーツ選手叩きにもいそしんでいる。とくに高卒選手は格好の標的だ。
「理系になれないから文系なんでしょ、実際クラスの大半がそうだった。運動部で調子に乗ってる奴も卑怯なスポーツ推薦で早稲田とか行くし、大嫌いですね」
工業大学では男だらけの中で4年間、やはりオタク趣味とオタクの集まりに明け暮れたそうだ。そして大学卒業後、Aさんは大手家電メーカーやゲーム会社、出版社やテレビ局など受けるも全滅。就職浪人と称したニート生活ののち、折からのWindows95に始まるITブームに乗って小さなゲーム会社に契約社員として就職する。
「職歴なしでしたけど20代でしたからまだ間に合いました。プログラマ採用ということでしたが、その会社で一から教わった感じです。一応情報系だったんですけど、ゲームに大学の授業はそれほど役に立ちませんでしたね。でも楽しかった。毎晩徹夜で会社に泊まり込んで、会社もオタクばっかりで年も近い社員ばかりですからオタク人生を謳歌しましたよ」
心底懐かしそうに、楽しそうに語るAさん。さらに口が回る。
「でねでね、1990年代末ごろに、ゲームも声優を使いだしたんです。声を収録できるようになった。それでうちでも声優を起用しだした」