手元の集計によれば、松木氏はシリア戦で82回の『同語反復』を行なった(*注6)。同点時は69分で49回(1分で0.71回)だったが、1点ビハインド時は26分で33回(1分に1.27回。ともに小数点第3位以下を四捨五入)とピッチが上がっている。
【*6:前半33分の「そう縦、そう、そうダイレクト!」のように1つのプレー毎に「そう」などと言っている場合、『同語反復』とは判断しない】
シリア戦での『同語反復』の回数ランキングを挙げると、以下になる。
1位:7回 前半18分の「これ」 「これ! これこれ! これこれこれこれ」
2位:4回 前半34分の「ない」 「ないないないない!! 関係ないあんなのは」
3位タイ:3回 後半20分の「よし」 「よしよしよし」 後半26分の「そう」 「そうそうそう」 後半32分の「おい!」 「うおぉい!おい!おい!」(※注4)など13例
前半18分、わずか2秒強で「これ! これこれ! これこれこれこれ」と7回も「これ」と叫んだ場面は日本のコーナーキックがクリアされ、そのこぼれ球を中盤でMF齊藤未月(湘南ベルマーレ)が拾ったシーンだった。松木氏は常日頃からこぼれ球への意識を口酸っぱく指摘しており、この試合でも開始早々に「こぼれ球のボールをまあ、自分たちのボールにいかにできるかですね」と話していた。そのため、劣勢の状況でこぼれ球を拾った齊藤のプレーに喜びが爆発したのだろう。
前半34分、日本のペナルティエリア付近でシリアの選手が倒れると、わずか1秒強の間に「ないないないない!!」と4回も「ない」と連呼している。日本が相手のペナルティエリア付近で倒れると「PK!PK!」とすぐ叫び出す松木氏も、相手選手のアピールには厳しいところを見せた。
アディショナルタイムを含めた95分間、日本を鼓舞し続けた松木氏。後半42分50秒に勝ち越しゴールを許した直後は、珍しく90秒間も沈黙が続いた。
今回はグループリーグで敗退したものの、開催国枠での東京五輪出場が決まっているU-23日本代表。オリンピックでは、松木氏を落胆させるわけにはいかない。
◆文/岡野誠:ライター・松木安太郎研究家。著書に『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)。松木氏の研究以上に力を入れた同書では、関係者への取材、膨大な資料を元に〈ムーンウォークを日本で初めて取り入れた〉説を多角的に証明。〈突然蒸し返され始めた「ビッグ発言」〉など通説を覆し、〈三浦知良との友情〉にもページを割いている。