台湾が民主化したのは李登輝総統の“静かなる革命”の90年代のことだ。以降、若者は自由を満喫したが、香港の若者の戦いが、この“天然独”の意識を変えたのだ。
「このままでは俺たちも危ない」
そのことを悟った若者は、中国に対して距離を置く蔡英文の支持に猛然と向かったのである。投開票前夜の1月10日、総統府前の大集会で蔡英文総統は50万人の支持者たちにこう訴えた
「台湾ではいかなる人もデモ・集会の権利を警察に守ってもらえます。放水砲や催涙弾を撃たれることもなく、盾を持った警官が走ってきて警棒で殴られ、血まみれになる心配もありません。これが“民主”です。
若い皆さん、台湾は民主の道を長い間、歩んできました。でも、そこまでの道程は大変辛いものでした。民主は空から降ってきたものではなく、無数の戦いと多くの人々の命を賭けた奮闘により、この地に根づいたものです。そのお蔭で私たちは民主的な暮らしができています。皆さんがこの道を今後どう歩んでいくのか、世界の人々が、とりわけ香港の若い方たちが注目しています
香港の若者は命と血と涙で私たちに“一国二制度”は絶対に通ってはならない道だと示してくれました。若い台湾の皆さん、民主と自由の価値はいかなる困難も克服できることを明日、香港の人たちに示しましょう!」
群衆から地鳴りのような歓声が巻き起こった。
「光復香港 時代革命」
あの香港デモの旗が、大きく振られていた。感動と使命感が総統府前に集った支持者たちに満ち満ちていた。私は群衆の中で立ち尽くしていた。