ライフ

【著者に訊け】石井公二氏 落ちていた5000枚の片手袋の研究

石井公二氏が『片手袋研究入門』を語る

【著者に訊け】石井公二氏/『片手袋研究入門 小さな落としものから読み解く都市と人』/実業之日本社/2400円+税

 単なるゴミのようでも、異界の入口のようでもある、その名もなき存在を、〈片手袋=寒い時期なんかによく町に落ちている片方だけの手袋〉と定義することから、石井公二氏は初著書『片手袋研究入門』を始めている。〈都市に取り残された小さき者たち〉〈私はそれを見過ごすことができなかった〉

「ちょうどカメラ付き携帯電話が出始めた2004年頃です。コンビニに向かう途中、ふと外に落ちていた片方だけの〈黄色い軍手〉にカメラを向けた僕は、撮るに値する対象とついに出会えたような衝撃を覚えたのです。しかもその直後、今度は白い軍手が落ちていたんです。あの点が線になる感覚と〈駄目押しのような多幸感〉に、人生を狂わされたようなものです(笑い)」

 本書は以来、5000枚の片手袋を撮影した氏の15年に亘る研究成果をまとめたもの。写真や図を多用したフルカラーの丁寧な作りやシャレの利いた解説文等、本の端々から好きが溢れ、読んでいるこちらまで愉快になれる1冊だ。それこそ〈Gloveには“love”が入ってるんだぜ〉とあるように、愛や多幸感は伝染する?

 幼い頃、ウクライナ民話『てぶくろ』に魅せられ、卒論のテーマは路上観察の開祖・赤瀬川原平氏の作家論と、素養も方法論も整い過ぎるほど整っていた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「全国障害者スポーツ大会」を観戦された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月26日、撮影/JMPA)
《注文が殺到》佳子さま、賛否を呼んだ“クッキリドレス”に合わせたイヤリングに…鮮やかな5万5000円ワンピで魅せたスタイリッシュなコーデ
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
遠藤
人気力士・遠藤の引退で「北陣」を襲名していた元・天鎧鵬が退職 認められないはずの年寄名跡“借株”が残存し、大物引退のたびに玉突きで名跡がコロコロ変わる珍現象が多発
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
相撲協会と白鵬氏の緊張関係は新たなステージに突入
「伝統を前面に打ち出す相撲協会」と「ガチンコ競技化の白鵬」大相撲ロンドン公演で浮き彫りになった両者の隔たり “格闘技”なのか“儀式”なのか…問われる相撲のあり方
週刊ポスト
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
注目される次のキャリア(写真/共同通信社)
田久保真紀・伊東市長、次なるキャリアはまさかの「国政進出」か…メガソーラー反対の“広告塔”になる可能性
週刊ポスト
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン