ビジネス

定年延長のしわ寄せで40、50代社員の大量リストラが加速する

「働けるうちは働け!」が政府の方針

「働けるうちは働け!」が政府の方針

「生涯現役社会」を強調する安倍首相の意を受けて、ついに厚生労働省が「70歳就業」(70歳定年)路線へと舵を切った。超高齢化社会が進む中、70歳を過ぎても働きたいという人がいる一方で、働き盛り世代にそのしわ寄せが来ることは決して無視できない問題だ。ジャーナリストの山田稔氏が、70歳定年社会の“落とし穴”を検証する。

 * * *
 2021年4月から、高齢者が希望すれば70歳まで働くことができるよう、厚生労働省が企業に就業機会の確保を求める関連法案の要綱をまとめ、労働政策審議会の専門部会で大筋了承された。70歳就業を企業の努力義務とするという。1月20日に召集された通常国会に提出する。

 厚労省が推し進める政策はどんな内容なのか。ポイントは以下の4つだ。

(1)企業は70歳までの就業に向け、定年延長、65歳以上の継続雇用制度導入などの方法で希望者が就労できる環境整備をする努力義務を負う
(2)短時間の仕事を掛け持ちする人の労災認定時に、すべての労働時間を合算して判断する制度を導入
(3)掛け持ちで働く65歳以上の人の雇用保険加入条件を緩和
(4)現役時代に比べ大幅に減給した60~64歳に月給の最大15%を支給する高年齢雇用継続給付制度について、2025年度から最大10%に引き下げる

 就業年齢を引き上げることで、膨れ上がる社会保障費を改善するために「支え手」を増やそうという狙いだ。

 日本社会では昭和初期から55歳定年が当たり前だった。一方、年金受給年齢も1953年(昭和28年)までは55歳だった。終戦直後までは「55歳リタイア」→「年金生活」が一般的だったわけだ。

 1980年代になると総労働力人口減少の解消を目的に定年が60歳に引き上げられた。このときも努力義務である。2000年には65歳までの雇用確保措置が努力義務とされ、2006年に65歳までの雇用確保措置が義務化され、2013年には65歳までの継続雇用を義務化した。こうして65歳定年が一般化したのである。

 当然、年金受給年齢は引き上げられる。1954年に60歳(女性は55歳のまま)、1985年に65歳(女性は60歳)になり、60~65歳まで特別支給の老齢厚生年金を支給。その後も老齢厚生年金定額部分の改正や報酬比例部分の改正が行われてきた。そして今、在職老齢年金の見直しが進められようとしている。

 政府の方針はハッキリしている。「働けるうちは働け!」──それに尽きるようだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
《同居女性も容疑を認める》清水尋也容疑者(26)Hip-hopに支えられた「私生活」、関係者が語る“仕事と切り離したプライベートの顔”【大麻所持の疑いで逮捕】
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
【大麻のルールをプレゼンしていた】俳優・清水尋也容疑者が“3か月間の米ロス留学”で発表した“マリファナの法律”「本人はどこの国へ行ってもダメ」《麻薬取締法違反で逮捕》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
清武英利氏がノンフィクション作品『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋刊)を上梓した
《出世や歳に負けるな。逃げずに書き続けよう》ノンフィクション作家・清武英利氏が語った「最後の独裁者を書いた理由」「僕は“鉱夫”でありたい」
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン