私の世代(団塊ジュニア・1972年生まれ)に遡ると高卒は卒業時に就職氷河期が始まる前だったため卒業者数より求人のほうが多く、引く手あまたでラッキーだったりもする。このある種の隔たりが大きな環境の違いを生み出し、同学年でもすべてを「氷河期世代」とひっくるめることの難しさにつながっている。
「でも地元を出たかったから、東京の専門学校に入ったんです」
清水さんの実家はかなりの田舎だ。詳しくは語らないが、ろくなところではなかったそうだ。浪人は家計の都合と近所の手前許してもらえず、京の専門学校に入学した。
「うちのド田舎では大学行く奴なんてごくわずかでしたよ。専門だってマシなくらい。みんな高卒でブルーカラー」
地元の公立高校ではそれなりの成績だったようだが、高校偏差値50程度の田舎公立生が当時の大学受験、ましてや首都圏の人気大学に特別な対策なしに進学することは難しかったかもしれない。地元には最底辺の私立大学はあったが、そこだけは勘弁だったという。
「いまの子がうらやましいですよ。いまならニッコマも簡単なんでしょ? 指定校推薦とかAO入試とか余裕じゃないですか。大学行きたかったですよ」
いまも大学にこだわる清水さん。それにはもちろん理由がある。
「知ってます? 転職サイトやエージェントって最近は大学からしか記入欄がないんですよ」
ひと昔前は高校や専門学校からだったが、近年では大学からしか入力できないようにできている転職サイトが見受けられる。エージェントはもっとか。
「ビジネス専門学校卒の僕はどこに書けばいいんですかね?」
現在の専門学校卒といえば医療系のような資格仕事か芸術・エンタメ系の夢追い学校が大半だが、かつては法律や経営、ビジネスを売りにした専門学校が乱立した時期があった。そこは実質、中堅高校あたりから大学に行けなかった人たちの受け皿となっていた。これらの専門学校も現在は人気の医療系や既卒、社会人向けの資格予備校的存在に鞍替えしているところが多い。
「そりゃブルーカラーならそんな記入欄なんか気にしなくてもいいんでしょうけど、僕も長年事務や営業のホワイトカラーでしたから、そういうハードルのあるところばかりになります」