芸能

美人講談師・一龍斎貞鏡「清純ぶるのが辛かった」前座時代

父も祖父も講談師という家に生まれた(本人提供)

 44年ぶりの大名跡復活となった6代目神田伯山(36)が都内で開催中の真打ち昇進・襲名披露興行は連日の大賑わいで、講談人気の復活がめざましい。意外に思われるかもしれないが、400年の歴史を誇る講談は実は「女性の社会進出」が進んだ芸能であり、全国で100名ほどいる講談師の半数は女流で、最大規模である東京の講談協会は所属する46名のうち26名が女流だ。

「それでも50年前は女流ゼロの完全な男社会だったんです。私も最初は師匠から『女にはできねえからやめろ』と言われていました」

 そう語るのは、「講談界きっての美人講談師」との呼び声高い一龍斎貞鏡さん(34)。女性ながらも骨太で迫力ある講談師として評判だ。祖父が7代目一龍斎貞山、父が8代目一龍斎貞山という講談一家に生まれた貞鏡さんだが、父は仕事と家庭を完全に分けており、幼い頃から講談とは無縁の生活だった。しかし大学生の時にたまたま国立演芸場で父の講談『牡丹燈記』を初めて生で聴き、これだ! と居ても立ってもいられなくなった。

「ひとりで何人もの人物を演じ分け、言葉だけで相手の心に響かせる講談に一目ぼれしました。また、父の後に登場した女性講談師がとてもきれいな着物でビシッと決めたお姿にも心を打たれました。すぐ『パパあたし入門したい』とお願いすると、『女には無理だ』と断られましたが、諦めずに頼み続け、やがて向こうが根負けしました」(貞鏡さん)

 2008年1月、21才で父・貞山のもとに入門するも、下積み時代はつらい日が続いた。

「前座は楽屋で下足番やお茶入れなどをするのが仕事です。講談師はゲンを担ぐので、間違えて違う履物を出すと『足を取られるじゃねえか』とカミナリが落ちました。お茶の濃さも先生によって違い、薄い茶を出すと『この馬のションベンみたいのは何だ!』と怒鳴られ、濃い茶を出すと『俺の喉を潰す気か!』と怒られた。怖さのあまりウルウルすると、『バカ野郎! 女を出すんじゃねえ!』とまた一喝。当時は何でこんなことやらなきゃいけないのかと思っていたけど、ある方から『目の前の一人の先生を喜ばせられないなら、大勢のお客様に喜んで頂くことなんて到底ムリだよ』と諭されて、ああ、そうなんだと妙に納得しました」(貞鏡さん)

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