『名刀大全』を担当する小学館の高橋進さんは「金銭面でも精神面でも自由に振る舞える女性が増えたことが大きい」と指摘する。

「女性たちが自分なりの価値観を持ってそれを表明し、行動に移せるような時代になったことも大きいと思います。女性の生き方が画一的だった昔と違って現在は多様な生き方が認められるようになった。加えて、昔は女性が『刀が好き』だとは公言しづらい雰囲気もありましたが、いまはそうではない。自分で稼いだお金を自分が価値を感じたものに堂々とお金を使うことができるようになりました」

 マーケティングコンサルタントの西川りゅうじんさんが注目するのは、刀の持つ「普遍的な価値」だ。

「変化のスピードが速い世の中ですが、天皇家に伝わる三種の神器の1つに剣があるように、刀剣は歴史を超越した日本の文化です。また、匠の技によって鍛え抜かれた日本刀の切れ味と美しさは世界一と言っても過言ではありません。そんな揺るぎない本物の魅力と価値が、多くの女性を魅了しているのでしょう」

 移ろいやすく複雑で、先行き不透明な時代ゆえ、変わらない価値を持つ刀が多くの女性を癒すのかもしれない。そんな刀剣女子たちに河内さんは心から感謝しているという。

「ぼくは復元も含めていろいろな日本刀を作ってきましたが、刀は昔の『斬る』という意味をなくしたから、このままではいずれ滅びるのではないかと思っていました。それを女の人たちが刀の生きる道を教えてくれた。これからは、美しさとしての刀を大事にすればいいという方向を示してくれました」

 そう言って現代の名匠は頭を垂れる。

 作り手と持ち手が相思相愛になり、刀ブームはさらに加速しそうだ。

※女性セブン2020年3月12日号

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