都内在住のOL平元寛子さん(30才)がその1人。
「小さな車が買えるくらいの値段でこれまでの人生で最も高い買い物でした」と笑う。
「5年ほど前から『刀剣乱舞』をきっかけに博物館や美術館に刀剣の展示を見に行くようになり、刀にまつわる歴史や伝承にも興味を持つようになりました。天眼鏡で刃紋や地金を拡大したときの美しさにますます虜になって、イベントで知った河内先生のもとを何度か訪れるようになり、2年前に『先生、私に刀を作ってもらえませんか』とお願いしたんです」(平元さん)
1年ほど待つと見事な短刀が完成した。その日から、平元さんの生活は一変した。
「出来上がりを見て素晴らしいと思いました。現代刀ではあるけれど古い刀の気配を感じる作品で、こんな素晴らしいものが私ごときの手元にあっていいのかと。それまでひとり暮らしだったし、忙しかったから雑然とした生活をしていましたが、短刀を手に入れると“ちゃんとしなくちゃ”という気持ちになり、鞘から短刀を取り出すときはきちんと部屋の掃除をして、きちんとした服に着替えるようになりました。
素敵なものが手元にあると女性としてウキウキするし、シャンと背筋が伸びる気がします」(平元さん)
大阪に住む実業家の山田富美子さん(69才)も、河内さんの刀を購入している。
「刀って実は手入れがとても大変なんです。長いし重いし億劫になることもあります。だけどふっと見たくなったら、取り出して手入れをすると気持ちが落ち着くんです。同時に背筋が伸びる感じになります。昔から仏像が大好きで、よく奈良の寺院などに見にいきました。刀は仏像とは違うけど、流れてくる静謐さだとか、神秘性だとか、底流には同じものを感じます」
彼女たちのような本物志向の刀剣女子が登場する背景には日本社会の変化も関係している。