◆母の部屋も訪問自粛に! 流行の収束を祈るのみ
2月に入ると、テレビなどは横浜港に停泊するクルーズ船を中心に新型コロナウイルス一色になった。ネット上には感染症の専門家らが発信する情報から、トイレットペーパーがなくなるというデマまでが入り乱れ、さすがの私も事の重大さに愕然とした。
“高齢者は重症化しやすい”“不特定多数が接近する満員電車や劇場が危険”と、まるでのんきな芝居見物の計画を非難されている気分。でも、「お芝居楽しみねー、カレンダーに書いてあるわ」と、母は世間のことなどどこ吹く風。今回に限って1か月半先のカレンダーに印をつけてしまっていたのだ。これを見るたび母は電話をしてくるだろう。もう行くしかない…。
防毒マスクとゴーグルで完全防備して、電車が混むようならタクシーでという無謀な妄想もした。しかしネット通販で普通のマスクさえ軒並み売り切れになっているのを見て、やっと私も目が覚めた。
やはり母の観劇は断念しよう。母の代わりに行ってくれる友人知人を探し、なんとか見つかった2月26日、政府がイベント中止要請を発動。公演もあっけなく中止になった。
幸い母はもう芝居のことをすっかり忘れていた。私は一転、気ままなひとり散歩をやめるよう騒ぐ口うるさい娘に早変わり。いまは母のサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)でも訪問自粛になり、気軽に顔も見に行けない。ひたすら流行の収束を祈るばかりだ。
※女性セブン2020年4月9日号