花束を手に晴れやかな表情の西郷さん(撮影/浅野剛)
「なんの変哲もない公立中学校が、西郷校長の“子どもの主体性を何より大切にする”という信念をきっかけに、生徒も、先生も、保護者も、そして地域までもが少しずつ変わっていきました」
橋本さんはその様子を、「まるで池に投げ込まれた小さな石が、波紋を広げていくようだった」と語る。いつの間にか学校全体に、校長の投げた“一石”の影響が行き渡っていた。そうやって、大きく変わった、と。
「桜丘中学校が本当にすごいのは“自分だって何かできるのではないか?”と思わせてくれる学校の雰囲気そのものだと思っています。私たちも感化され、いち保護者がこのようなイベントを開催できたのかもしれません」(橋本さん)
この講演会に司会・進行を行うファシリテーターとして登壇した、教育ジャーナリストでもある世田谷区長の保坂展人さんは言う。
「西郷校長は、赴任当時から、何も意気込んで学校改革を始めたわけではありません。生徒が声を上げ、理不尽だと思うことを、教員と力を合わせて10年かけて少しずつ改革してきたわけです。西郷校長のトップダウンで改革したわけではないところに、意義があるのではないでしょうか」
桜丘中学校と似た校風を持つ私立学校に、麻布学園がある。中学・高校からなる男子校御三家の1つで「自由闊達・自主自立」を旨とし、学校生活のあらゆる局面で生徒に判断がゆだねられている。そして、その校風こそが生徒の心を成長させているのだと理事長の吉原さんが話す。
「麻布学園も桜丘中学校と同じく、校則はありません。私が入学した中学1年生の頃には“本当に自由にしていいんだ”と驚いたものです。“学校から信頼されている”という気持ちが、自分たちの責任感や自主性を育んだのだと実感しています」
※女性セブン2020年4月9日号