一方、そこに立っているだけで「犯人?」と思わせる不気味さを見せつけたのが、石坂校長役を演じた笹野高史さん。こちらは70代、いぶし銀です。「前から校長先生があやしいと感じてきた」「真犯人と繋がっているのは校長」と犯人捜しブームの話題をひっさらった観が。
森昌子や山口百恵のファンだった、と昔を懐かしむ校長の口調が、どこか不気味。笑う姿がなぜか怪しい。しゃべるシーンだけで異化効果を生む。あの人が真犯人でないかと視聴者をザワつかせる。さほど多くの時間登場したわけでもないのに、奇妙な節回しとそのたたずまいが強い印象を残しました。
団塊の世代の笹野さんは、そもそも東大安田講堂事件のニュースをテレビで視て自由劇場に飛び込んだという反骨の人。「どんな役にもカッコよさがある」をコンセプトにしているとかで、『コメディお江戸でござる』(NHK)からイマドキの携帯電話CMまで、多種多様な舞台に登場して時代の中で輝く。その振り幅が素晴らしい。「レジェンド笹野じいさん」の存在感に圧倒されます。
このドラマは中心軸に集中力の高い竹内涼真さんを据え、緊張感を保ち、周りには優れた子役や齢を重ねた個性派俳優を配して、強烈な印象を刻みつけた。特に大詰めにおいて子役とじいさんの力による効果は絶大だったと言えるのではないでしょうか。犯人捜しの謎解きだけでなく実は「役者を見せるドラマ」だったのでしょう。若者のテレビ離れなどと言われる昨今、人間の魅力をきちんと表現できれば世代を超えて視聴者を揺さぶるドラマも作り得る、ということを証明した画期的な作品だったと思います。