芸能

『テセウスの船』を成功に導いた「10代と70代」俳優の存在感

番組公式HPより

 優れた作品は主演の力だけで生まれるものではない。今期、前評判を遥かにしのぐ“快走”を見せた『テセウスの船』においても然り。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 ドラマ『テセウスの船』(TBS系)は予想通り注目の中で幕を閉じました。最終回は19.6%(関東地区)を記録し今期ドラマでトップの座を獲得。盛り上がりは予想されていたとはいえ、これほどの数字になるとは……。そしていまだに、日曜日夜はロスの余韻が続いているもようです。

 このドラマが大成功した理由は何なのか? 役者の力、原作と違う真犯人が設定されアナウンスされたこと、それによる犯人捜しブーム、家族愛の丁寧な描き方など、複数の理由が指摘されていますが大切なポイントがもう一つ。それは「10代と70代」俳優の存在感でしょう。

 言うまでもなく、犯行の一端を担った「みきお」を怪演し話題をさらった柴崎楓雅くん(11)は「怖い時のみきお」と「普通の小学生のみきお」2面性を演じ分け、話題になりました。しかしもう一人、演技達者なあの人のことを忘れてはいけません。田村心(竹内涼真)の姉・鈴の少女時代を熱演した白鳥玉季さんです。ちょっと拗ねているようでどこか甘えていて、微妙に揺れる多感な少女期の人物を演じさせたらこの人の右に出る子役はいない。それほど巧い!

 まだ10才だそうですが、大人以上の演技を見せることもしばしば。今回は家族の絆を描き出す佐野家長女役で活躍しましたが、例えば2019年7月に放送され共感を呼んだドラマ『凪のお暇』では、凪(黒木華)の隣部屋に住む小学生5年生のうららとして登場。この時の演技も、キラリと光っていた。毅然とした態度で「私たち、親が思ってるほど子どもじゃないから」と言い放ったり、凪をかばってくれたり。白鳥さんは今自分が何を求められているのかを的確に察する能力が高く、脚本の中に置かれた役柄の「意味」をしっかりと把握し形にする力があるのでしょう。

 しかも、一番重要な点は「やり過ぎない」こと。子役はややもすると感情を過剰に演じる方向に走りがちと思いきや、優れた子役は「引き算」がきちんとできる。白鳥さんはその代表でしょう。もちろん鈴の弟役・番家天嵩くんも過酷な役をよく頑張った。役者としての今後が本当に楽しみです。

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン