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2020.04.03 16:00  週刊ポスト

なぜ人は映画が小説化されると不満を覚えるのか、に迫る

「1909年創刊の『活動写真界』の発刊趣旨が映画の粗筋を予め知る重要性にあったり、日本人は映画を活字で読むことに結構早くから馴染んでいます。他にも米映画『名金』のノベライザーが荒畑寒村だったり、永井荷風が新作映画の筋書だけ発表していたり、大抵は欲が絡んでいますが(笑い)歴史が長い分野です」

◆映画の考古学として大事な存在

 また、映画本編より怖い小説版『ジョーズ2』や、内外でリメイクが相次いだ『ゴジラ』など、権利関係が複雑になればなるほど、物語本来の原型がノベライズ本だけに残されることも。

「記号学者エーコの対談書にもありました、ノベライゼーションは映画の考古学としても大事だと。映画の完成前に締切を設定されるノベライザーたちは、撮影過程で変更される前の脚本や数枚の企画書を元に小説化するしかない。時として小説版が映画本編への従属を拒絶し、主従関係が瓦解することもあり、そこも面白いですよね」

 自身、中学1年生の時に初めて『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』のノベライズ本を購入。それを観る前に読み、〈初めて目にするものばかりなのに、自分はすべてを知っているという、デジャブにも似た体験〉が、本書にも生かされたと言う。

 とかく難解になりがちなポストモダン論に関しても、波戸岡氏の場合は個々人の体験や「ノスタルジア」に訴えるアプローチが新鮮だ。一方に旧世代、一方に未来の人々からの郷愁すら見据え、双方から挟み撃ちする形で現代を照射してみせる。

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