「1909年創刊の『活動写真界』の発刊趣旨が映画の粗筋を予め知る重要性にあったり、日本人は映画を活字で読むことに結構早くから馴染んでいます。他にも米映画『名金』のノベライザーが荒畑寒村だったり、永井荷風が新作映画の筋書だけ発表していたり、大抵は欲が絡んでいますが(笑い)歴史が長い分野です」

◆映画の考古学として大事な存在

 また、映画本編より怖い小説版『ジョーズ2』や、内外でリメイクが相次いだ『ゴジラ』など、権利関係が複雑になればなるほど、物語本来の原型がノベライズ本だけに残されることも。

「記号学者エーコの対談書にもありました、ノベライゼーションは映画の考古学としても大事だと。映画の完成前に締切を設定されるノベライザーたちは、撮影過程で変更される前の脚本や数枚の企画書を元に小説化するしかない。時として小説版が映画本編への従属を拒絶し、主従関係が瓦解することもあり、そこも面白いですよね」

 自身、中学1年生の時に初めて『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』のノベライズ本を購入。それを観る前に読み、〈初めて目にするものばかりなのに、自分はすべてを知っているという、デジャブにも似た体験〉が、本書にも生かされたと言う。

 とかく難解になりがちなポストモダン論に関しても、波戸岡氏の場合は個々人の体験や「ノスタルジア」に訴えるアプローチが新鮮だ。一方に旧世代、一方に未来の人々からの郷愁すら見据え、双方から挟み撃ちする形で現代を照射してみせる。

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン