ライフ

なぜ人は映画が小説化されると不満を覚えるのか、に迫る

明治大学理工学部教授の波戸岡景太氏

【著者に訊け】波戸岡景太氏/『映画ノベライゼーションの世界 スクリーンから小説へ』/小鳥遊書房/2000円+税

 明治大学理工学部総合文化教室のHPに、『映画ノベライゼーションの世界』の著者・波戸岡景太氏(43)は、〈私はふだん、アメリカの新しい小説や映画を研究しながら、理工学部の英語教育を担当しています〉〈一方で、研究者としての私は、言葉やイメージを人に届けることの難しさをテーマにしています〉と率直な紹介文を寄せる気鋭の学者だ。

 前作『映画原作派のためのアダプテーション入門』が〈小説の映画化〉を巡る違和感の解体書だとすれば、本書はその応用編。〈映画の小説化〉という、これまた厄介な文芸の歴史を紐解き、その魅力と可能性に迫る。

 そもそもadaptationとは生物等の〈適応〉を意味し、それが脚色や映画化を意味する専門用語に転じたとか。その成果をさらに活字にするnovelizationに関しても「大事なのはプロセス」と著者は言い、媒体を超えてなお物語ろうとする人々の営みを、面白がりこそすれ、否定するはずもない。

 専門は1937年生まれの米国人作家トマス・ピンチョン及び、ポストモダン全般だ。

「1970年代に一世を風靡したピンチョン以降、小説と映画の境目が薄くなり、研究の場でも小説を読み解くために映画を観ることが増えていきました。そんなこともあり、前著は『なぜ人は小説が映画化されると不満を覚えるか』について考えてみたのですが、その逆の『映画の小説化』でも不満な人は不満なんです(笑い)。

 それこそ『オリジナルなきコピー』がポストモダンのキーワードなのに、それでもオリジナルを求めてしまうのが人間の常。才能はオリジナルを作った個人に宿るという錯覚や、自分の好きな小説や映画を唯一絶対と思いたい心理が、たぶん皆さんの心をザワザワさせるんだと思います」

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン